fc2ブログ

関東果し状

kantouhatasijou.jpg

#1520「関東果し状」
藤山寛美が馬鹿すぎる

製作年:1965年
製作国:日本
製作会社:東映(京都撮影所)
監督:小沢茂弘
出演:鶴田浩二藤純子/大木実/長門裕之/藤山寛美/村田英雄
公開:1965年12月31日


 東映京都の関東シリーズ、第四作「関東果し状」であります。kinenoteの解説では何故か博徒シリーズの第七作目と紹介されてゐますが、間違ひでせう。監督は引き続き小沢茂弘、脚本は小沢と村尾昭、音楽は津島利章に変更となつてゐます。主題歌「男なら」を歌ふのはツルコウ本人。タイトルバックはクライマックスの大攻防戦。

 今回の時代は大正末期、鶴田の役柄は滝井組組長。冒頭は組の新年会、手締めで「男でありたい」「男になりたい」などと合唱するのは恥しい。川崎一帯を牛耳る阿久津組が仕切る紡績工場では女工が酷使され、病気になつても入院させない実態を知る滝井。仲介に立つ滝井ですが、阿久津(河津清三郎)側は逆恨みして滝井を襲ひ、とばつちりで女工のゆき(藤純子)は失明してしまひます。

 殺気立つ滝井・阿久津の間に入つたのが、関東梅島会のボス・梅島(村田英雄)で、その場は収めるものの、阿久津は仲間を結集して神奈川北斗会を結成して梅島会との対決姿勢を示します。
 新たな紡績工場を川崎に建設するといふ事で、阿久津はこの仕事の請負を狙ひます。しかし社長の安井(内田朝雄)は梅島組と北斗会を公平に分担を提案しました。これを阿久津は拒否、邪魔な梅島の始末を代貸の日野(長門裕之)に命じます。日野は滝井とは幼馴染で、道理の分かる人物。それでわざと殺されるつもりで梅島に刃を向け、取り巻きに殺されるのでした。

 更に阿久津は2月1日に迫つた川崎工場の鍬入れ式を妨害しやうと、全国に声をかけて600人を集めます。安井社長はこれはただでは済まないと怯え、鍬入れ式の延期を申し出ますが、滝井はそれは根本的な解決にならないと諭し、式が始まる前に神奈川北斗会を撲滅すべく、自分の為に命を捨てる50人を集め、阿久津に果し状を送るのでした......

 今回は鶴田が最初から親分として登場。配下に大木実山城新伍山本麟一藤山寛美遠藤辰雄ら。大木はナムバア2扱ひ、女房が三島ゆり子で、決戦前夜の愁嘆場が憐れを誘ひます。

 藤山寛美はカネもない癖に豪遊し、更に阿久津相手にイカサマ賭博をして殺される馬鹿なヤツ。これで鶴田の足をかなり引張つてゐます。ムッチーは今回も「梅島親分」。相変らず貫禄を示しますが、結果的にはあまり役に立たないボスでした。内田朝雄が善人の社長を演じるのも意外性あり。社員の田中春男は内田と内通するワルでしたが。

 ヒロイン藤純子は、今回がシリーズ最後の出演(最終作は桜町弘子)ですが、出番は少なめでやや不満であります。しかも登場して直ぐに失明し、サングラスなんかを装着してゐます。医者の役は香川良介。当初は恨み節を叩きつけるも、直ぐに鶴田への愛情が芽生える予定通りの展開。しかし鶴田と藤は実年齢は21歳も離れてゐるんですね。

 そのワル側はカシラが内田朝雄。工業地帯の一角を担ふ工場建設を一手に引き受けやうと画策し、その為に邪魔な村田や鶴田を消すべく様様な悪事を重ねます。配下に名和宏汐路章柳生博、代貸の長門裕之だけ良い奴で、これまた不自然。ストオリイ上の都合でせうが、何故内田のやうなワルの下にゐるのか、説明が欲しいところです。どうせ何かの恩義があるのでせうが。

 最終決戦は、相手の組に殴り込むのではなくて、広い野ッ原で敵味方入り乱れての「合戦」で、ダイナマイト使ひまくりの派手な戦ひ。しかし敵600人に対し、此方は僅か50人。しかも相手は飛び道具も充実してゐます。普通ならひとたまりもないところですが、主人公一人だけ生き残るのも、やはりスタア鶴田浩二だからこそ。
 藤純子の眼も手術は成功し、神奈川北斗会も全滅させたので一見「まあ、好かつた」なんですが、味方も大量に死んでゐるので、とてもハピイエンドとは申せません。三島ゆり子も可哀想。要するにヤクザ世界の馬鹿馬鹿しさを強調したと云ふ事でせうね。

スポンサーサイト



関東破門状(1965)

kantouhamonjou1965.jpg

#1519「関東破門状(1965)」
ネコさんが清々しい程のワルぶりを示す

製作年:1965年
製作国:日本
製作会社:東映(京都撮影所)
監督:小沢茂弘
出演:鶴田浩二藤純子/田村高廣/大木実/志村喬/村田英雄
公開:1965年10月31日


 鶴田浩二主演の「関東シリーズ」第三弾・「関東破門状」であります。これも監督・脚本は小沢茂弘。原案の石本久吉とは、関西侠客の人でせうか。音楽は菊池俊輔、主題歌「関東破門状」は鶴田ではなく村田英雄が男臭く歌ひます。サブちやんが出ない事もあつて、挿入歌は無しです。

 時代は大正末期、関東梅島会のドン・梅島(村田英雄)は、震災で焼けた吉原遊郭に代り勃興した亀の井の治安を守るべく、南北に分けて南を黒田(志村喬)一家、北を竹内(金子信雄)一家に治めさせます。黒田組の小頭・秩父弥三郎(鶴田浩二)は親分の信頼の厚い好漢で、親分の娘・美恵(藤純子)に愛されてゐます。しかし美恵には堅気の男と結婚させるやうにと、黒田の亡き妻の遺言があるので、市会議員の息子との縁談を強引に進める黒田。

 美恵に横恋慕するのが、代貸の古野(原田甲子郎)。流れ者の五郎(大木実)を使ひ、市会議員に脅しをかけ縁談を壊します。そしてこれを弥三郎の差し金と偽ります。この古野は獅子身中の虫で、敵対する竹内のスパイとなつてをり、黒田から印鑑を預つてゐるのを好い事に、黒田名義で竹内から金を借りては私腹を肥やしてゐます。そしてそれがバレると、弥三郎がやつた事にして罪をなすりつける汚い奴。

 弥三郎は弟分の久五郎(田村高廣)が、恋人で遊女のお米(三島ゆり子)を自由の身にする手助けをしますが、それが原因で騒動となり、竹内のあまりに汚いやり口に怒つた弥三郎は竹内の片腕を斬る! しかし原因がどうあれ、この不始末は黒田も梅島の手前けじめをつける必要があり、泣く泣く弥三郎を破門とするのでした......

 タイトル通り、鶴田浩二が破門される一作であります。ヤクザが破門されるとは死を宣告されるのと同じと劇中でも言及されてゐます。田村高廣と三島ゆり子のカップルの為に自分を犠牲にし、分つてゐながら金子の陥穽に落ちるのは歯痒いのです。ところで、母親の松浦築枝も、身請けの200円をポンと出す良い人でした。

 親分の志村喬も人格者で、鶴田への信頼も厚い。しかしこれほどの人物が、原田甲子郎(その憎らしさは絶品)の裏切りに気付かないのは不自然であります。更に上位の親分がムッチーこと村田英雄。理解があり貫禄は示すものの、些かご都合主義的な親分です。それにしても鶴田、志村、金子らの上に立つ親分を演じる村田英雄つて、何でこんな大物の役ばかりなのでせう。

 ヒロインは勿論藤純子さん。鶴田を純粋に愛してゐるのに、志村がヤクザとは結婚させない方針なので、常に心に抱く屈託を演じます。艶めかしさは抑へ気味。
 一方ワルはネコさんがワルの本領発揮、天津敏とは違ふ、ネチネチした極悪さで天下一品。手下には遠藤辰雄、曾根晴美、汐路章らお馴染みの面面。最後は鶴田に追詰められ、最早これまでと悟るや、「俺が悪かつた、許してくれ」と命乞ひをするふりをして、隙を見て攻撃する卑怯千万なところも嬉しいのです。

 そんな訳で、特段に演出のキレがあるとか、設定が目新しいとかではないのですが、当時の東映任侠の見本市となる安定さを示した一本と申せませう。ワルから改心する大木実や、田村の姉役の高森和子、特別出演的な京山幸枝若明石恭子も印象に残るシャシンでした。

関東やくざ者

kantouyakuzamono.jpg

#1518「関東やくざ者」
死ぬ事より生きる方が難しい

製作年:1965年
製作国:日本
製作会社:東映(京都撮影所)
監督:小沢茂弘
出演:鶴田浩二藤純子丹波哲郎/大木実/北島三郎/村田英雄
公開:1965年7月10日


 鶴田浩二×小沢茂弘による「関東シリーズ」第二弾、「関東やくざ者」であります。小沢は脚本も担当。原案の梶原賢三と云ふ人は存じませんが、どんな人でせうか。音楽は菊池俊輔、主題歌は鶴田が歌ふ「男なら」。タイトルバックとラストシーンで流れます。

 挿入歌は北島三郎兄弟仁義」。サブちやんはチンピラとして登場し、事もあらうに病院内で唸つてゐます。あと一人、山本麟一の恋人役で出演した二宮ゆき子が、「まつのき小唄」「このまゝ別れて」を披露します。

 鶴田の大谷清次郎と村田英雄の高島伯太郎だけは前作と同じ役名ですが、他は藤純子はじめ全員別人役。時代背景も前作の明治22‐23年に対し本作は大正七年の米騒動時代。全く世界観が違ふので、全員違ふ役で出たら良かつたのに。

 東京にまで波及した米騒動を抑へられぬ現内閣を打倒せんと、民友党顧問の原田弥太郎(内田朝雄)は、関東桜会会長の川上東洋(丹波哲郎)と結託します。そして政権奪取すると、好景気の波に乗り有卦に入つた海運業界をも牛耳るために、大日本郵便の乗取りを企て株主を脅迫します。大日本郵便社長の丹下(香川良介)は、それに対抗すべく高島伯太郎(村田英雄)に相談、伯太郎は大谷組組長・清次郎(鶴田浩二)の協力を仰ぎました。

 来たる株主総会に陣どる桜会の連中に対抗する為に、清次郎は宇都宮から300人を集め、原田の息のかかつた警察の妨害を躱して上京させます。ところが余りの騒ぎに、流血沙汰を恐れた原田が乗取りを断念、梯子を外された形の川上東洋はそれでも清次郎との決着をつけると宣言するのです......

 鶴田・村田連合VS内田・丹波連合の闘ひと云ふ、まことに分かり易い構図。鶴田の配下には「四天王」大木実山本麟一待田京介曽根晴美。更に三国人(?)の遠藤辰雄。そして鶴田に惚れて無理矢理子分になつたチンピラに北島三郎山城新伍。待田は肺病で喀血しながらも入院せず、単身丹波に挑んで自滅する奴。情婦に三島ゆり子

 ヒロインは芸者の藤純子で、鶴田は父の仇と云ふ設定。宴席で泥酔して鶴田に恨み節を叩きつけます。しかし藤の父は相当なワルのやうで、斬られた経緯も承知の模様。彼女はヤクザが嫌ひで、その愚かしさを訴へる為に酒の力を借りて思ひを吐露したのです。しかし客の鶴田に絡んだりコップの水をかけたり、失礼千万なのに女将も他の芸者も誰も止めないのは不思議です。結局彼女はヤクザは嫌ひながら清次郎を忘れられず、一日で良いから清次郎さんの妻になりたいと告白、戸惑ひながらも鶴田が受け入れるのは良い感じです。

 ワルの丹波哲郎は「俺は卑怯なマネは嫌ひだ」と繰り返す癖に、村田を闇討ちにするなど言行不一致もあります。怯んだ内田をも一喝し面子の為に鶴田との対決に挑むのでした。

 鶴田はナムバア2の大木を温存し、ヤマリンと曽根を引き連れ決戦場へ。トラックで突込みダイナマイトでボカボカ派手に殴り込みます。ところで丹波の母親役の原泉が少し変つてゐます。戦闘の最中に入り込んで「東洋、東洋」はないでせう。結局丹波は、俺の命はお前の思ひ通りにならぬと、自害するのでした。やくざ渡世の馬鹿馬鹿しさを描きながらも、あくまでも鶴田浩二をヒーローとして扱ふ任侠ものと申せませう。
 

関東流れ者(1965)

kantounagaremono.jpg

#1517「関東流れ者(1965)」
女性解放の演説をする藤純子

製作年:1965年
製作国:日本
製作会社:東映(京都撮影所)
監督:小沢茂弘
出演:鶴田浩二藤純子/小山明子/大木実/北島三郎/村田英雄
公開:1965年4月18日


 生誕100年のツルコウ主演、「関東シリーズ」の第一作「関東流れ者」であります。後に日活で渡哲也主演の同名映画が製作されますが、内容は別物。監督・脚本は小沢茂弘、浪曲師の京山雪洲が「原案」となつてゐます。音楽は菊池俊輔、タイトルバックで流れるのは鶴田本人が歌ふ「無情のブルース」でございます。

 時代は明治22年、新憲法発布に沸いてゐます。記念の剣道大会では、土建業を営む高島組の馬頭三五郎(大木実)が無双ぶりを発揮して向ふところ敵なし。このまま優勝かと思はれた時、渡世人・大谷清次郎(鶴田浩二)が出場、あつさり三五郎を片付けました。逆恨みした三五郎は清次郎を闇討ちにしますが、これまた簡単に返り討ちに。感服した三五郎は清次郎の弟分になります。

 親分の高島(村田英雄)は清次郎の男つぷりに惚れ、組の頭として迎へます。三五郎には遊女のお万(小山明子)と云ふ女がゐて、将来を誓ひあつてゐます。お万を清次郎と引き合わせる三五郎ですが、お万の様子がをかしい。実はお万は本名をお繁と云ひ、清次郎とは幼馴染で、かつて二人は愛し合つてゐた仲だつたのです......

 時代劇低迷に悩んでゐた東映は、「人生劇場 飛車角」シリーズのヒットにより、新たに任侠路線を敷きます。鶴田浩二は「博徒」シリーズ、高倉健は「日本侠客伝」シリーズで任侠映画は開花し、両者は忽ち東映の顔となるのでした。そんな鶴田が小沢茂弘監督と組んだのが、「関東」シリーズでした。

 本作と二作目の鶴田の役名は「大谷清次郎」。「おおたに」ではなくて「おおや」。ヒロインは松竹のスタア女優・小山明子。この時期になると五社協定も緩んで来たのでせうか。事情があつて鶴田と小山は結ばれず、小山は遊女に身をやつして大木実に身請けされます。再会した二人は、明らかにお互ひを愛してゐるのに、鶴田は彼女を大木実と一緒にさせると云ふ、何ともやるせない展開です。事情を知つた大木も内心に蟠りがあります。このモヤモヤは、後半で大木がヤケクソとも見える敵への攻撃に繋つてゐます。

 今一人、藤純子が女性解放演説をする運動家として登場。誰も真面目に聞いてくれず、生卵を投げつけられたりします。これは新たなキャラクタア創造かと思つたら、結局鶴田に秘かに心を寄せるやうになつて、従来の娘さんを演じるのは拍子抜けでした。しかしまだ鶴田が恋愛感情を抱く対象ではありません。彼女の父親がワルの内田朝雄で、汚い手を使つて高島組の入札を妨害します。藤純子は父のやり口を知つてゐるので、娘として恥ぢてゐます。こんな極悪親父の元で、かかる清純で潔癖な娘が育つのは眞に不自然なのですが。

 まだ後年の任侠ものほとパタン化されてゐないので、却つて新鮮なところもあります。鶴田も怒ると余り我慢しないで、「来やがつたなウジ虫ども!」と暴れるし、最後に内田に止めを刺さんとする場面では、藤純子が父を庇ひ「殺さないで」と哀願し、それに負けて仇を討つのを断念、警察に引き渡すなど、珍しい場面があります。

 その他の共演者としては村田英雄北島三郎の歌手コムビが目立ちます。特に村田は貫禄十分の親分。サブちやんはまだ若造つぽく、最後は殺されてしまふ役。風呂場で「兄弟仁義」を歌ふシーンあり。二人とも後に、主演シリーズが作られます。
 物語は割と有り勝ちな展開ですが、鶴田の男つぷりが眩しい娯楽作と申せませう。以後シリーズは5作迄製作されるのでした。

男はつらいよ 寅次郎夢枕

torajirouyumemakura.jpg

#1516「男はつらいよ 寅次郎夢枕」
マドンナに惚れられた寅さん

製作年:1972年
製作国:日本
製作会社:松竹
監督:山田洋次
出演:渥美清/倍賞千恵子/八千草薫/米倉斉加年/松村達雄/田中絹代
公開:1972年12月29日


 シリーズ節目の十作目、「寅次郎夢枕」であります。冒頭の夢は、女給のさくら(倍賞千恵子)が、悪い親分(吉田義夫)に絡まれてゐるのを、「マカオの寅」と称する男(渥美清)が救ふといふもの。日活無国籍映画のテイストです。

 とらやでは、御前様(笠智衆)の甥で東大の助教授である岡倉(米倉斉加年)が、二階の寅の部屋に間借りする事になりました。例によつてそこへ帰つてくる寅次郎。臍を曲げて又出て行かうとするところに、幼馴染の千代(八千草薫)が訪ねて来たので家出は中止しました。千代は離婚経験があり、小学生の息子の親権は父方で自由に会へない寂しさを感じてゐます。千代が現在独り者と知つて、寅は俄然元気になり、彼女が開店した美容院に入り浸る日々に。

 ところが岡倉が千代に一目惚れしてしまひ、彼女と別れたくないばかりに、アメリカ留学も断る始末。遂には恋煩ひで寝込んでしまひます。当初は面白がつて茶化してゐた寅ですが、自身も経験があるからか、千代との間を取り持つ事を請負ひます。ところが千代は、「寅さんとなら一緒に暮しても......」と答へました。思はぬ逆告白に、寅は冗談だらうと笑ひ飛ばしますが......

 マドンナに八千草薫を迎へた一作。当時は41歳くらゐですが、美しさは相変らず。ガス人間が惚れるだけの事はあります。年齢に合せて、バツイチ子持ちの設定。とらやに彼女を招待するが、「子供」を連想する事を云ふなと念を押す寅本人がNGワードを連発するのはお約束。慌ててつけたテレビも同様で、笑つてしまふ。本来なら寅が夢中になつて最後はフラれるパタンですが、今回は学者の米倉斉加年が彼女を好きになると云ふ展開です。

 この米倉はいつもの寅さんのネガみたいな存在で、終始喜劇的な演技なのですが、実はいつもは自分がかうなのだと寅は気付いた事でせう。自説の恋愛論をぶつシーンにもそれが表れてゐて、最初はあんなに嫌つてゐた米倉に、最後は心を寄せてゐます。同情と云ふより、自分を見てゐるやうでやるせなかつたのでは。

 そして前半で、往年の大スタア田中絹代が登場するのも目を引きます。正直ストオリイには関係ないのですが、出てゐるだけで場の雰囲気が変るのは流石と申せませう。出来れば彼女の話が伏線となつて、後の物語に絡む点があればもつと良かつたと存じます。

 寅さんはマドンナを振つた形になつてゐますが、米倉がゐなければ結ばれたかどうかは不明であります。寅の気分としては、やはり失恋と同じ哀しみを感じてゐるのではないでせうか。

 サテこのまま寅さんを続けても良いのですが、流石に50作連続でやると書く方も読む方も飽きるので、十作毎五回に分けやうと思ひます。従つて次回から一旦別の作品にして、ポーズを置いてから再開致します。デハデハ。

 その他:
◎今回のタイアップはダイハツ。テレビCMにもハイゼットが出てきました。
◎前作のJシュトラウスに続き、ビバルディを効果的に駆使します。
◎口ずさむ流行歌は「どうにもとまらない
◎今回登場する駅は中央本線・日出塩駅。
◎冒頭で出て来る花嫁さん(佐藤和子)は、佐藤蛾次郎の妻ださうです。
◎さくらが「おばちやん」と呼ばれて怒る場面あり。そんな年齢になつてきました。