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東京駅物語


東京駅物語 (文春文庫)東京駅物語 (文春文庫)



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東京駅物語
北原亞以子【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
2010(平成22)年8月発行


タイトルに惹かれて手に取つた本。時代背景は明治から昭和の終戦あたりまで。
文字通り東京駅にまつはる物語が連作短篇の形で綴られてゐます。登場人物は市井の庶民が中心で、皆それぞれに読者の分身たる部分を有してゐると思はれます。

「質店の歌人」なる称号にこだはる女、自分は特別な存在と自惚れる男、名前と人格を捨てた詐欺師、自殺願望の男、戦死した冴えない男を忘れられぬ女...
悪人らしい悪人は登場しません。しかしどこか自分に似てゐる人たちばかりで、身につまされる思ひがいたします。さういふ男女の無数の物語を、東京駅は何も語らずただ俯瞰するのみであります。
丁寧な作りの職人仕事、といふ形容が浮かぶ小説『東京駅物語』です。

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河童・或阿呆の一生


河童・或阿呆の一生 (新潮文庫)河童・或阿呆の一生 (新潮文庫)



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河童・或阿呆の一生
芥川龍之介【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1968(昭和43)年12月発行
1989(平成元)年9月改版


生れて初めて読んだ芥川作品は、「羅生門」でも「蜘蛛の糸」でも「地獄変」でもなく、「或阿呆の一生」でした。これはあまり正統的ではないかもしれません。
中学生当時、我が家に元元有つた『新潮現代日本文学全集』の「芥川龍之介」の巻を開いたら、「或阿呆の一生」なる作品が目に飛び込んで来たのであります。タイトルからしてユウモラスな愛すべき阿呆の話かと思つたら、これといつたストオリイのない、支離滅裂な作品であつた。
「微苦笑王子」久米正雄に宛てた文章が死を予感させ、胸騒ぎを誘発します。もちろん我我はその結末をすでに知つてゐる訳ですが...アフォリズムともいへず、やはり叫びとでも申せませうか。

「河童」は、精神病患者の話として語られます。人間の世界以上に人間的な河童の世界。当時の世相を風刺するといふよりも、作者の極限に達した苛立ちが感じられるのであります。
「大導寺信輔の半生」の「只頭ばかり大きい」少年は、まさに芥川自身。幼時の写真を見ると、確かに不気味なほど頭部がでかい。既製品の帽子では頭に入らなかつたといひます。相当コムプレックスを感じてゐたのでせう。
「歯車」ではもはや救ひが見えません。芥川はドッペルゲンガーを見たのか。自身の生霊か。歯車とは例へば「虹男」(1949年のパートカラーの映画)みたいなものでせうかね。違ふか。

他に「玄鶴山房」「蜃気楼」を収む。かうしてみると、とても芥川龍之介の入門篇としては薦められぬ作品集であります。が、これも芥川が遺した貴重な芸術品と申せませう。

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紫苑物語


 

紫苑物語
石川淳【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1957(昭和32)年7月発行
1970(昭和45)年7月改版


表題作のほかに「鷹」「善財」の二作品も併録。中篇小説三篇が愉しめるのであります。
「紫苑物語」は、若き国の守(かみ)が主人公。舞台は王朝時代。守は歌の才能を持ちながら、父によつてその作品に手を加へられたことから、歌をやめてしまひます。そして憑かれたやうに狩に出かけ、弓を引く毎日であります。
血を覚えた守の弓は、家人たちをも貫くやうになり、庭の、その血を吸つた場所に守は紫苑を植ゑさせるのでした...
引き締まつた文章。書き出し部分から陶酔させます。きつとかういふのが名文と呼ばれるのでせう。快適なリヅムと心地良い旋律でうつとりするのであります。必読。

「鷹」は、専売公社を首になつた国助といふ男の物語。どうやら戦後のドサクサ混乱時代のやうです。国助が仕事を探してゐると、偶然会つたKといふ男からEなる男を紹介されます。Eに会ふと、たばこを指定した場所へ届けて、代金を回収する仕事だといふ。しかしこのたばこは普通のたばこではない。どうやらヤバイ仕事らしうございます。
また、Kから渡された「明日語文法」「明日語辞書」の二冊。明日語とは何か。明日語で書かれた新聞を解読すると、信じられぬ事が書いてあつたのであります...

最後は「善財」。これまた終戦直後の世相が窺はれます。焼跡の東京へ戻つた21歳の若者・筧宗吉くんの、うつろな魂の遍歴とでも申せませうか。思慕してゐた女性に再会できても、宗吉くんはまるで自ら選択したかのやうに、破滅へ向かふのであります。

三篇とも主人公はそれなりに行動しますが、いづれも蟻地獄へ突入するかのやうに、その先には救ひはありません。あの戦争で、反省も総括もしなかつた人たちを目の当りにした作者の叫びも聞える気がします。

※講談社文芸文庫からも同名の本が出てゐますが、併録作品が違ふので注意されたし。ま、いづれにしても読んで損はございません。

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吾輩は猫である


吾輩は猫である (新潮文庫)吾輩は猫である (新潮文庫)



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吾輩は猫である
夏目漱石【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2003(平成15)年6月発行


昨日(12月9日)は夏目漱石の没後95年目に当たる日でした。『吾輩は猫である』はたいそう思ひ出深い作品であります。
いはゆる児童書以外で、一般の書籍として初めて買つて貰つたのが本書であつたのです。小学六年生でした。
なぜ『猫』かといふと、当時コーヒーのCMで「吾輩は猫である。うちの主人は寝る前だといふのにコーヒーを飲んでゐる...さうか、カフェイン抜きだから寝る前に飲んでも大丈夫なのか...」といふのがありまして(せりふは正確ではない)、『吾輩は猫である』を読んでみたくなつたからであります。もうすぐ中学生だし、かういふものを読んでも問題あるまい...

実際に読むと、コーヒーは登場しませんでしたが、予想以上の面白さに夢中になつたものであります。影響を受けすぎて、当時は普段の会話の中に意味も無く「アンドレア、デル、サルト」「大和魂!」「タカヂアスターゼ」などのフレイズを挿入させてゐました。

本作は元元第一章のみで完結する短篇として発表されました。それが好評だつたので連載が続き、かかる長篇小説の体をなしてゐる、といふのは有名な話。
したがつてこれといつた物語の筋はございません。映画やアニメでは寒月君と富子の恋愛に重きを置いた演出が多かつたやうな記憶があります。
また、吾輩は犬であるなどのパロディを数多く生んでゐて、その数は数え切れぬほどであります。ちなみに「我が肺は2コである」の駄洒落を最初に活字にしたのはさだまさしさんらしい。

で、本書との付き合ひ方としては、別段大文豪の代表作だからといつて畏まる必要は全くありません。たとへば、①猫の目を通して、当時の社会風俗などが分かつて面白い(同時に、昔も今も変らぬ人間の物悲しさも)。②漱石先生の生活ぶりが窺はれて微笑ましい。③苦沙弥先生の家に集う迷亭君や寒月君との落語調の会話が愉快だ。といつたところでせうか。
書名は知つてゐるが、読んだことはないといふ人が多いらしいので、該当の方は是非読むとよろしからう。と勘考する次第であります。

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心臓抜き


心臓抜き (ハヤカワepi文庫)心臓抜き (ハヤカワepi文庫)



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心臓抜き
ボリス・ヴィアン【著】
滝田文彦【訳】
早川書房刊
2001(平成13)年5月発行


ボリス・ヴィアン最後の長篇小説であります。
以前の作品にも増して厭世観漂ふ世界。しかし読後感は重たくない。不思議であります。強いて言へば昔のエゲツナイ新東宝映画を観終つた感じですかな。

一応ジャックモールといふ精神科医が主人公の形をとつてゐますが、とても読者が感情移入できる雰囲気ではありません。尚ジャックモールのモール(仏語mort)は死を連想させて不吉であります。
ジャックモールは精神分析の実験が目的で、辺鄙な村までやつて来ます。しかし時空のをかしいこの村では、いたづらに自分の精神を破壊させるのみでありました。

物語らしい筋はあるにはありますが、本作ではその意味は小さいようです。人を喰つた会話にニヤニヤしながら、知らぬ間に読者もジャックモール同様、混迷の世界に引き込まれてゆくのです。

また、タイトルの『心臓抜き』とは、そもそも何か。ヴィアンの読者ならば、『日々の泡』(『うたかたの日々』の邦題もあり)の中で、ジャン・ソル・パルトル(ジャン・ポール・サルトルのもぢり)を殺害する道具として記憶してゐることでせう。
なので本書を読みながら「いつ心臓抜きが登場して、誰に対して使はれるのだらう」と思つてゐると、結局最後まで現れないのでした。どういふこと?
この小説自体が読者の心臓を抜く毒なのだよ、といふことでせうか。ま、詮索しても意味がないのがボリス・ヴィアンですがね。

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