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文章読本


文章読本 (中公文庫)文章読本 (中公文庫)



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文章読本
三島由紀夫【著】
中央公論社(中公文庫)刊
1973(昭和48)年8月発行
1995(平成7)年12月改版


本日は三島由紀夫といふ人がハラキリをした日ださうです。1970(昭和45)年11月25日。何と41年経過したわけであります。
何でも若松孝二監督が三島事件を映画化したとか(公開は来年)。ううむ...まあ、今でも三島信者は多いといふことでせうか。

彼が『文章読本』を書いた目的は第一章に明確に語られてゐます。
アルベール・チボーデが小説の読者を「普通読者(レクトゥール)」と「リズール(精読者)」に分類したことを紹介し、この『文章読本』で、読者をレクトゥールからリズールに導きたいと意欲を述べてゐます。
即ち彼は、文章上達法としての読本ではなく、文学作品の良き鑑賞者を養成せんがための読本を目指したと申せませう。さう考へれば腹も立ちますまい。

実際、第二章以降は小説・戯曲・評論・翻訳などの分野ごとに、三島流文章論を展開し「これこそが文章のお手本であります」とばかりにたたみかけます。
その文章から漂つて来るのが、「良い文章といふのは誰にでも書けるものではなく、ごく一部の限られた達人にのみ可能であり、君たち凡人が気取つて名文をものした心算になつてゐてもそれは恥づかしいだけさ。分相応といふものを知りなさい」と、心の底から大衆を馬鹿にした筆致ですね。でもここまで徹底すれば爽やかでさへあります。

ところで、本書で一番三島由紀夫らしい茶目ッ気が表れてゐるのは、巻末の「質疑応答」ではないでせうか。
著者が「三島由紀夫」であるといふ理由で今でも版を重ねてゐると思はれます。しかし最後は肩の力が抜けた「からっ風野郎」になつてゐて少し嬉しいのであります...

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負けるのは美しく


負けるのは美しく (集英社文庫)負けるのは美しく (集英社文庫)



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負けるのは美しく
児玉清【著】
集英社(集英社文庫)刊
2008(平成20)年3月発行


今年5月に惜しまれつつ亡くなつた児玉清さん。こんな本を引つ張り出し哀悼の意を表するものであります。
児玉さんは東宝専属の俳優だつたのですが、東宝時代の出演映画は、わたくしあまり観てゐないのです。
せいぜい「電送人間」(冒頭のお化け屋敷の客で出てくる)、「悪い奴ほどよく眠る」、「日本海大海戦」くらゐですかな。無論追悼上映をしたのであります。イイ。

さて本書はその児玉清さんのエッセイ集。その文才については、今更わたくしが喋喋するまでもございますまい。そのたたずまひ同様、清冽で贅肉をそぎ落としたやうな文章ですね。同時に温かみを感じます。
東宝に入社するに至つた経緯の「母とパンツ」に始まり、屈辱の経験から俳優として見返してやらうと決意する「雑魚と雑兵」など、下積みの苦労を綴つた文章が多い。
また、共演の山茶花究さんや信欣三さんの意外な一面など、初めて知る秘話もあります。信欣三さんは面白すぎます。

最終章「天国へ逝った娘」では、36歳の若さで他界した娘さんのことを語つてゐます。
正直、涙なしには読めぬ辛い文章であります。それにしてもこの病院は酷い。児玉さんも言ふやうに、死期が迫つてゐる患者だからと気軽に人体実験まがひのことをしたのではないか。義憤を感ずると同時に、一般に病院とはかういふものかと恐怖も迫るのであります。
しかし、児玉さんも娘さんの元へ行く。きつと再会したであらうと思へば、救ひはあるでせう。

尚本書は、著者の没後に再び注目を浴びたやうですので、入手は容易と申せませう。では。

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日本文学を読む


 

日本文学を読む
ドナルド・キーン【著】
新潮社(新潮選書)刊
1977(昭和52)年11月発行


以前我が家には新潮社の「日本現代文学全集」全50巻がありました。
父親はとりたてて読書家ではないので、なぜ家にあつたのかは謎でありますが、おそらく誰かから譲り受けたものでせう。
くたばつてしめへ、ではなく二葉亭四迷から始まつて、安部公房・大江健三郎まで、おほむね一人1冊で構成されてゐました。まあ2-3人で1冊分けあつたり、谷崎潤一郎のやうに一人で2冊独占したりと例外はありましたが。
まだ中学生の私は、とにかく頭から読んでみませうと齧り付くやうに格闘した覚えがあります。かなり背伸びをしたと申せませう。

ドナルド・キーン著『日本文学を読む』を読んでゐて、当時のことを思ひ出したのであります。
とりあげる作家たちの顔ぶれも四迷・紅葉・露伴に始まり安部・大江・開高までとほぼ同じ。さういへば本書の初版が出た時期もちやうどその頃ですな。

ドナルド・キーン氏が約50人の文学者を語ります。自身が日本人ではないといふことで、時に誤解を受けたりするやうですが、専門家も含めて日本人でもキーン氏ほどの眼力を持つ人は少ないでせう。
酷評する場合も、全体としてはその価値を認め、愛情を注いでゐます。ゆゑに自分の好きな作家・作品が貶されてゐても不愉快にならないのであります。

「こんなに鏡花の小説にほれている私に、「翻訳する意思はないか」と問われたら、返事は簡単である。「とんでもない、この快感を得るために三十年前から日本語を勉強したのではないか」と。」(泉鏡花)
「日本近代文学を通読すると、私は啄木が最初の現代人であったというような気がしてならない」(石川啄木)
「誰かに聞かれたら、近代文学における最高の大家は谷崎であると敢えて言うだろう」(谷崎潤一郎)
「明治、大正時代の日本の小説の中で、一番感銘を受けるものは有島武郎の『或る女』である」(有島武郎)
「二十世紀の歌人がどんな人であったかということを火星人に説明する必要が起きたら、斎藤茂吉の歌集を見せたらよいと思う」(斎藤茂吉)
「日本の詩人がノーベル文学賞の候補者になることはない。(中略)西脇順三郎はすでに受賞した欧米の詩人に劣らないほど大きな存在だと私は信ずる」(西脇順三郎)
等等、世間の一般的評価を受け入れながらも、独自の視点で「日本文学を読む」のでした。
我々日本人はこんなに豊かな文学世界を身近に持つてゐたのですね。改めて読みたくなる作家が幾人もゐて困りましたな。

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にんげんのおへそ


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にんげんのおへそ
高峰秀子【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
2001(平成13)年10月発行


昨年末に亡くなつた(元)女優・高峰秀子さんのエッセイ集であります。
池部良さんの時も感じましたが、これだけの人物が亡くなつたといふのに、通り一遍の報道しかされてゐないやうです。悲しい。
本書は何となく本屋で逍遥してゐたところ見かけて、購買した次第であります。

知人のお嬢さんにウェディングドレスを貸す話の「四十三年目のウェディングドレス」。貸衣装で100万円とはべらぼうな話であります。既にスタアだつた高峰秀子が、結婚当時貧乏だつたといふ。なぜ?と思つてゐたら後の「ひとこと多い」で明らかになりました。
「オッパイ賛歌」は、ある医者の誤診で危ふく乳房を片方失ふところを、石井ふく子プロデューサーのおかげで救はれた話。セカンドオピニオンは大事だな、といふ方向へは行かず、誤診をした医者に思ひを馳せるのでした。

「おへそ」は映画界の職人の良い話。「ひとこと多い」では、養母との確執が語られる。スタアなのに貧乏だつたのは、この養母にすべて吸い取られてゐたからなんですね。
「ただ今自分と出会い中」は、自らに忍び寄る老いがテエマ。しかし全く深刻さがなくユウモワで包まれた文章なので、読む方としても辛くないのが良い。
勇気をもらへる1冊と申せませう。

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機長からアナウンス


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機長からアナウンス
内田幹樹【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2004(平成16)年8月発行


小旅行のお供に携帯した文庫本であります。下呂温泉。
飛行機の旅ならより気分が高揚したかもしれませんが、私は航空機は好んで乗りませんので。
もつとも下呂は近すぎて空路はございませんが。
国内旅行ではなるべく汽車を駆使します。陸続きの土地にわざわざ飛行機で飛ぶのはつまらないのであります。沖縄へ行つた時も、飛行時間を少しでも減らさうと、福岡まで汽車で行き、福岡空港から那覇まで飛んだものです。

元A社(と作中で表記される)パイロットの内田幹樹氏の第一エッセイ集です。A社とは全日空のやうです。なんて言はなくても皆知つてゐるのでせうね。
酒の席での話が面白いから本にせよ、と求められて書いたものであります。当方は航空業界の知識がないので、なるほど「へえ」と思ふ内幕話が満載です。
人気のYS-11は、パイロット仲間には不評なのですね。パワーが無いし、コクピットは暑すぎたり寒すぎたりで最悪であると内田氏は語ります。また、国産といはれてゐるが、部品はほとんど外国製なのだとか。

格安航空券に関する話などは「内部の人間」らしく、一般の乗客とは少し異なつた意見のやうです。航空機に於るサアビスとは何か、これは提供する側と享受する側との間で溝があるのではありますまいか。それは航空業界に限つたことではないでせうが。
ま、ここは余計なことは考へず、気楽に読めばいいのでせうね。

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