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左腕の誇り


左腕の誇り―江夏豊自伝 (新潮文庫)左腕の誇り―江夏豊自伝 (新潮文庫)



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左腕の誇り 江夏豊自伝
江夏豊【著】
波多野勝【構成】
新潮社(新潮文庫)刊
2010(平成22)年ら2月発行


プロ野球を見始めた頃、江夏豊はすでに阪神タイガースの大エースと呼ばれる存在でした。まだ後年ほど腹も出てゐなくて、凄味を感じたものです。「不世出の大投手」といはれることも多いですが、沢村栄治もスタルヒンも金田正一も稲尾和久も江川卓もさう呼ばれたことがあります。それが全て事実なら逆に不世出ではないといふ矛盾したことになります。どうでもいいけど。

思へばその頃、セントラル・リーグには各球団を代表する大エースがゐたものです。即ち大洋の平松・讀賣の堀内・中日の星野仙一強気の勝負・ヤクルトの松岡・広島東洋の外木場・そして阪神の江夏豊。
無論パシフィック・リーグにも阪急(現オリックス)の山田久志や太平洋クラブ(現西武)の東尾修など、球史に残る怪物投手がゐた訳ですが、当時は完全にセリーグ(といふか讀賣)中心の報道体制だつたので、子供だつたわたくしには印象が薄かつたのであります。

この『左腕の誇り』は、江夏豊自伝といふサブタイトルが付いてゐますが、波多野勝氏によるインタビューを構成した聞き書きの形になつとります。
以前から江夏豊といふ人物は、そのイメエヂとは違ひ、チームの事情を優先し、謙虚に人の話を聞く耳を持ち、自分を殺すことのできる忍耐強い野球人だと思つてゐましたが、本書を読むとさらにその意を強くするのであります。さうでなければ、阪神タイガースで彼の野球人生は終つてゐたのではないでせうか。
それにしても五体満足で投げられたシーズンがプロ入り1年目と2年目だけだとは。今のプロ野球のやうに間隔を十分空けて登板してゐれば...とも思ひますがこればかりは仕方が無い。

といふ訳でまことに読み応へのある一冊でございます。個人的には、江夏豊が大信田礼子さんとお付き合ひしてゐたことがある、といふ情報は知らなかつたので驚きました。本筋には関係ないけれど。

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大下弘 虹の生涯


大下弘 虹の生涯 (文春文庫)大下弘 虹の生涯 (文春文庫)



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大下弘 虹の生涯
辺見じゅん【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
1999(平成11)年11月発行


戦後プロ野球を盛り上げた功労者といへば、まづONの名を挙げるのが通例であります。その意見に異を唱へる人がゐれば、必ずヘソマガリの評をいただくことになりませう。
一方その前の世代、戦後の焼跡からON登場までを支へたのは、赤バット川上哲治と、青バット大下弘と申せませう。
本書『大下弘 虹の生涯』は、タイトル通り大下弘選手の生涯を辿つた評伝であります。

セネタースといふ個性豊かなメンバーが揃つたチームに入団した大下弘。一言多十(ひとことたじゅう)とか長持栄吉(ながもちえいきち)とか印象的な名前の選手が多かつた。エースの白木義一郎は長いアゴを有し、ロングロングアゴーと呼ばれました。相手打者が投ゴロを打つた時、全力疾走を怠ると見るや、いきなり捕手へ送球する人。打者はそれに気付いて慌てて走り出すのですが、捕手から一塁手への送球には結局間に合はないといふ展開ですな。今のプロ野球でかういふことをすれば間違ひなく叩かれますね。私見では、それよりも凡打で全力疾走しないのが当り前の風潮の方が問題だと思ひますがね。

入団時から「ホームラン」を要求された大下としては、かういふ環境のチームであつたことは好条件でした。勝利を義務付けられ「紳士たれ」なんて言はれるチームでは、個人記録を狙ふことは難しいと思はれます。
確かに大下は推定170メートル弾を飛ばす豪打者でしたが、それでも当時の粗悪な「飛ばないボール」を本塁打するには、三振の危険を負つてでも一発狙ひをしなければいけなかつたと言ひます。青田昇氏は、後の飛ぶボール時代に大下がプレーしてゐたら、年間60-80本打つたのではないかと話してゐました。

本塁打の魅力に加へて、あの天真爛漫な笑顔と飾らない人柄。人気が出ない筈がありません。しかし華やかな舞台の裏側では常に屈託を抱へてゐたさうです。母親がクスリ中毒になつてゐたとか。
また、天才選手に有り勝ちですが、自らの「ワザ」を伝へることは下手だつたやうです。指導者としては結果を残せませんでした。
また、これほどの選手の割には晩年は恵まれなかつたやうです。本書によると、病死ではなく自ら大量の睡眠薬を飲んだことになつてゐます。つまり自殺といふこと? 医師と検死官の二人が相談の上、心筋梗塞として発表されたといふことです。ううむ。

最後に著者は、大下を弔ふには、三原脩の以下の言葉が最もふさはしいと紹介してゐます。

「日本の野球の打撃人を五人あげるとすれば、
  川上、大下、中西、長嶋、王。
 三人にしぼるとすれば、
  大下、中西、長嶋。
 そして、たった一人選ぶとすれば、
  大下弘。」

本書は日本のプロ野球創成期の、貴重な記録にもなつてゐます。様様な先達が、血反吐を吐き心身をすり減らしながら焦土から創り上げてきた歴史であります。読んでみませう。
(新潮文庫版もあり)

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プロ野球が殺される


プロ野球が殺される (文春文庫)プロ野球が殺される (文春文庫)


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プロ野球が殺される
海老沢泰久【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
2009(平成21)年9月発行


今年のセントラルリーグは、なにがしといふチームが貯金を独り占めにして、ひいきにしてゐる私としては「いやあ5球団のファンの皆さん、申し訳ない」などと込み上げる笑ひをかみ殺してゐるのです。
もつとも長続きはしないだらうとは思ひますので、ご安心を。長年このチームのファンをしてゐると、急失速するのは慣れてゐるからです。ここ数試合の貧打ぶりを見ると、案外早いかも。

さて本書。物騒なタイトルであります。殺される。
もしプロ野球が死にかかつてゐるのなら、勝手に内部から崩壊してゐるのではないかと思はれるのですが。「殺される」といふのなら、一体誰が殺すのか。
第1章「野球選手に感情移入できない」を見ると、まづ選手自身を槍玉に挙げてゐます。しかし第2章「プロ野球が壊れていく」では、コミッショナーも球団もオウナーも監督も選手も、そして世論もマスコミも皆悪いやうに見受けられます。救ひがないですな。

ただ海老沢氏といひ宇佐美徹也氏といひ、昔の投手を賛美するのはいいが、まるで今の投手が怠け者みたいに語るのはどんなもんでせうね。
稲尾投手や杉浦忠投手(郷土の英雄!)の化け物みたいな鉄腕ぶりを、今の投手に求めてはいけません。権藤権藤雨権藤の時代ではありますまい。
それ以外の、制度に関する提言などには、やはり球界の皆様には耳を傾けていただきたいものです。

尚、本書の後半はサッカーを始め大相撲などほかのプロスポーツを論じてゐます。

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みんなジャイアンツを愛していた


 

みんなジャイアンツを愛していた

海老沢泰久【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
1994(平成6)年10月発行


タイトルだけで拒否反応を示す人もゐるかも知れませんねえ。
ま、私もさうでしたから。海老沢氏ともあらう方が、何たること!なんてね。

しかしさすがに海老沢氏。冷静な分析であります。
まづ最初に、川上哲治氏が出会つた『ドジャーズの戦法』なる一冊の本から始まります。これにより日本のプロ野球は近代化を遂げたといふことで、川上氏の功績について語ります。川上氏といへば何かと評判が芳しくないのでありますが、この事実は評価されるべきでありませう。
そして川上野球が、「みんなが愛していた」ジャイアンツを完成させたと申せませう。

そのジャイアンツを、ミスターこと長島茂雄氏がをかしくしてしまつたとする。その後の藤田氏・王氏も昔のジャイアンツを取り戻さうとする動きを見せませんでした。海老沢氏の苛立ちが伝はる筆致であります。

次いで広岡達朗氏。この人は我がスワローズを球団史上初の優勝・日本一に導いた偉い人。
川上氏との確執からジャイアンツを去つたといはれてゐます。ところが川上野球をもつとも正統的に受け継いだのが広岡氏であるといふのも定説です。さりながら、広岡野球が開花したのはジャイアンツではなく、スワローズであり、ライオンズだつたのです。

そして他球団のライバルたち。江夏豊・平松政次・星野仙一の各氏であります。
皆それぞれの表現で、「愛されたジャイアンツ」を倒す喜びを語つてゐました。この辺まで読み進めると、タイトルの意味が分からうといふものです。

結局、ジャイアンツは強かつたから愛されただけではないのか、といふ疑念が浮かびますが、その辺は海老沢氏の筆力に心地よく騙されたといふ感じでせうか。

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千代の富士一代


 

千代の富士一代
石井代蔵【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
1991(平成3)年9月発行


横綱白鵬独走の相撲界。白鵬関には何の罪もありませんが、つまらないのであります。
先達ての初場所における白鵬は、圧倒的な強さを感じませんでした。結構スキが有つたやうに思ひますが、稀勢の里関以外は虚しく敗退したのであります。何とかしてくれ。

テレビで昔の(といつても昭和後期くらゐ)取組をVTRで見せてくれることがあります。「昔は良かつたなあ」的な物言ひは好きではないのですが、当時の土俵の充実振りを見ると、やはり隔世の感があります。
この『千代の富士一代』も、そんな時代の物語でございます。

千代の富士を語るにあたつて避けられぬ、九重部屋の歴史から語られます。元々九重部屋は、名門出羽海部屋からの破門騒動から始まりました。
元千代の山の九重親方は次期出羽海を継ぐ予定だつたのが、当時現役の横綱佐田の山が出羽海親方の娘と婚約し、後継者となつてしまつたのであります。
そこで九重親方は独立して部屋を興しますが、当時の出羽海部屋は「分家独立を許さず」といふ建前のため、破門されたといふ経緯がありました。

単なる千代の富士個人のサクセスストオリィではなく、千代の山-北の富士-千代の富士と続く九重三代の物語でもあります。もちろん実話なのですが、石井代蔵氏の筆力により、まことに感動的な「相撲小説」となつてゐます。千代の富士をあまり知らない人に、特に読んでいただきたいと勘考するものであります。

現在の九重部屋は千代白鵬が部屋頭で、唯一の関取。黄金期を思へば、ちと寂しいですな。若い千代の国、千代鳳あたりがきつと頭角を現すのではないか、と期待してゐます。
予想が外れたら、すまん。

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