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ゲンスブールまたは出口なしの愛


ゲンスブールまたは出口なしの愛

ゲンスブールまたは出口なしの愛
ジル・ヴェルラン【著】
永瀧達治/鳥取絹子【訳】
マガジンハウス刊
1993(平成5)年7月発行


セルジュ・ゲンスブールの本格的評伝であります。早いもので、彼が世を去つてからもう19年になるのですねえ。
著者のジル・ヴェルランといふ人はパリで活躍する、ベルギー人の音楽ジャーナリストださうです。
しかしどちらかといふと、音楽的側面よりもゲンスブールの人間性により多くの記述を割いてゐます。おびただしい数の人物にインタビューを重ね、その証言を中心に構成されてゐるのです。

セルジュと関りの深かつた女性たち、とりわけブリジット・バルドーとジェーン・バーキンの話は興味深い。最後の女性・バンブーもちよつとだけ登場しますが、愛娘シャルロット・ゲンスブールのインタビューらしきものがなかつたのは残念でした。

セルジュの魅力は今更述べるまでもありませんが、一般的には「才能はあるが、反社会的な言動で周囲を困らせた不良おやぢ」といふ印象でせうか。つまり人間性に問題ありと。
ところが本書を読むと、彼は実にはにかみやで、周囲に気を遣ふ部分があることがわかります。仕事に対しては、その結果の責任を負ふ姿勢がある。仕事にかかるまでは怠け者なのですが。可愛いところがあるぢやないか! 実際に私生活や仕事上で彼に接した人たちが証言するのだから、説得力があります。我々外野がブーブーいふことはない。本書を読みながら改めてCDを聴いてみると、その悪たれぶり、挑発もいとほしい。
ま、現実にセルジュのやうな男がそばにゐたらやはり困るでせうが...

今回は、この本をお薦めするといふよりも、セルジュの音楽を聴いてくださいといふのが本音と申せませう。一度カブレると、中中大変ですがね...

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敵意の環


敵意の環

敵意の環
清水一行【著】
徳間書店(徳間文庫)刊
1995(平成7)年2月発行


清水一行氏の訃報を知り、残念でたまらず手にした一冊であります。79歳、死因は老衰ださうです。 今月15日に亡くなつてゐたさうで、なぜか1週間ほど発表が遅くなつてゐます。
この数年はもう新作を見ることもなかつたのですが、やはり一時代を画した超人気作家だけに、今回の報道には喪失感を覚えるのであります。

一流商社マン・多木省吾は、最近目に見えない「敵意」を感じてゐました。そこで、おでん屋兼調査事務所所長の松永靖に調査を依頼します。松永は元捜査二課の刑事です。調査対象の人物は、何と自分自身。自分の周辺を調査してもらふことで、この得体の知れない「敵意」の正体が分かるのではないだらうか...といふことです。
松永は、こんな依頼は初めてだと訝しながらも引受けます。
ところがその後、依頼人多木の周辺には、異常事が相次いで起きるのであります。狙はれてゐる! どうやらこの調査を快く思はない人物がゐるやうなのです。それが「敵意」の元なのか...

清水氏といへば企業小説。本書でも商社の内情が活写されてゐますが、それよりもミステリーとしての側面が大きい長篇小説です。
そして「敵意」なるものの本質、「火のないところに煙はたたない」といふ言葉のいい加減さ、その陰で多くの人が傷ついてゐるといふ現実。「これが、もし自分に起つた出来事ならば」と誰でも思はざるを得ない恐怖。
夢中になつて無意識のうちに、ページをめくる手がどんどん早くなつてゆくのであります。

清水氏の作品中でも、決して代表作でも有名な作品でもないのですが、さすがに「一行ブランド」、水準は高いのであります。安心して読める娯楽作と申せませう。改めてその死を悼むものであります。

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追憶の夜行列車


追憶の夜行列車追憶の夜行列車



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追憶の夜行列車
種村直樹【著】
SiGnal刊
2005(平成17)年4月発行


最近鉄道の話題は暗いものが多いのです。
近所を走る名鉄三河線からは7700系電車が引退し、これで「パノラマカー」一族はすべて姿を消してしまつた。
もう涙も涸れてしまひました。

全国的には、夜行列車の削減が話題となつてゐますね。先日も特急「北陸」・急行「能登」が運転休止となり、ニュースなどでもとりあげられました。
しかしこの流れは、実はすでに国鉄末期から始まつてゐたのですね。分割民営化により、複数会社にまたがる長距離列車は廃止の方向に向かひ始めたのです。
さう、JRになってから現在に至るまでじわじわと夜行列車の本数は減つてきてゐます。ダイヤ改正の度に時刻表から夜行列車がひとつ、またひとつと消えてゆく。ああ。

『追憶の夜行列車』は、レイルウェイ・ライターの種村直樹さんが平成以降に書いた夜行列車の記事の傑作選です。
ちやうど夜行列車の衰退期に当ります。
<Ⅰ>では急行「八甲田」の最終列車のルポがあります。これは珍しいことです。種村さんは、お別れやさよならは好きではなく、かういふイベントは敬遠する人だからです。

「ローカル線にしろ列車にしろ、つきつめていえば利用者が少ないから廃止されるのだし、日ごろは深いつきあいもないのに、なくなると聞いてさびしい、残念だ、けしからんと騒ぎたて、あげくの果てに“さよなら祭り”になってしまうのが嫌なのである」

まつたく同感であります。最近は「葬式テツ」なる人々が増えてゐるやうなので、同意を得にくいかも知れませんが。

ちなみに本書でとりあげた夜行列車のうち、「八甲田」「能登」「ムーンライトながら」「大垣夜行」「さくら」「日南」「あかつき」「はやぶさ」は2010年3月現在すでに廃止もしくは臨時列車化されてゐます。
今田保さんの解説にあるやうに、「残るのは「カシオペア」と「トワイライトエクスプレス」のみ(あるいは全廃)という事態さえ、残念ではあるが考えられないことではないと思われる」。そしてそれは近年現実味を帯びてきました。

空路の最終便より遅く出発できて、空路の朝一番よりも早く目的地に着ける。移動しながら睡眠がとれる。そんな良い点が多い夜行列車。工夫次第で生き残る事は出来ただらうに、分割されたJR各社の思惑などが邪魔をし、再生させることなく夜行列車は終焉を迎へやうとしてゐます。
まさに「追憶の夜行列車」になりつつあるのでした。

なほ、本書の版元「SiGnal」は「地方小扱」ですので、本屋の店頭にはあまり並ばないと思ひます。
名駅前の「ジュン○堂」にはありましたが。
ではさらば。

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ぼくは本屋のおやじさん


ぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)ぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)



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ぼくは本屋のおやじさん
早川義夫【著】
晶文社刊
1982(昭和57)年5月発行


晶文社の「就職しないで生きるには」といふシリーズの1冊。しかしラインナップを見ると、皆ちやんとした仕事をしてゐます。立派な就職と申せませう。「会社員にならずに生きるには」といふ意味合いでせうね。

著者の早川義夫さんは、ミュージシャンとして知る人ぞ知る存在です。
その早川さんが「早川書店」といふ本屋を開業し、書店主としての苦悩を語ります。
いや、別段彼は苦悩を語るつもりではなかつたのでせうが、結果的に「ああ、本屋の主とはなんて何て辛い商売なのだらう」と読者に思はせます。

問合せの多い本が入荷しない。しかし大書店には山積みになつて陳列されてゐる。
ならば注文を出す。しかし入らない。忘れた頃に「品切れ」の判子が押された注文書が戻つてくる。
お客さんからは文句を言はれる。信用をなくす...

ここで人はつぶやくかも知れません。「それは、本書の舞台となつてゐる30年前の世界ではないのか? さすがに今はそんなことはないでせう?」
私の考へでは、その意見は半分正しく、半分は正しくない。
なぜなら、「早川書店」のやうな本屋は、もうすでに絶滅の危機に瀕してゐるからです。
現在、本屋として正常に機能してゐるのは、早川義夫さんのいふ「大書店」と、チェーン展開をしてゐる会社でせう(チェーン店ですら、書店専業は難しく、レンタル屋などを併設して集客に努めてゐます)。
即ち、中小書店を取り巻く諸問題は解決したのではなく、中小書店そのものが淘汰されてしまひ、商品(本)の調達が可能な本屋だけが生き残つたといふ訳です。たぶん早川さんのいふ「ネクタイをしてこなくちゃ駄目」な本屋でせう。

冷静に考へるならば、一般客の望む結果とも申せませう。本書にも「一年に一冊売れるか売れないかの本を、一年間棚に差しておくよりも、たとえば『平凡』、『明星』をうず高く積んだ方が、何倍ものお客さんにサービスしているわけで......」といふ記述があります。例へに使ふ雑誌に時代を感じますが(その後早川さんは書店をやめ、音楽活動を再開してゐます)。

そんなわけで本書は、昭和戦後の、ごく一般的な中小書店の記録として伝へたい一冊であります。
今でも容易に入手可能でございます。

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新・鉄子の旅 1


新・鉄子の旅

新・鉄子の旅 1
ほあしかのこ【著】
小学館(IKKIコミックス)刊
2010(平成22)年2月発行


菊池直恵さんの『鉄子の旅』を受け継いだ、新人漫画家ほあしかのこさんのデビュー作であります。
第1旅では、キクチからホアシへの「引継ぎ」が行はれ、どうやら1コマだけキクチが書いてゐるやうですね。
前作は横見さん・キクチ・イシカワ(のちカミムラに交代)の3人が基本でしたが、今回はさらにIKKI編集長(テツ。スィッチバック大好き)と、女優の村井美樹さんが加はり、たいそう賑やかになりました。
私はIKKI誌上では毎月読んでゐたので、単行本は改めて買はなくてもいいかな、とも思ひましたが購買してしまつた。
その理由は、村井美樹さんが登場してゐるからで、お気に入りの女優さんなのです。もつとドラマに出てほしい。

全7話(7旅)が収録され、タイトルは「初めての~」で統一されてゐます。
前作より横見さんの巨大さが強調され、せりふがカタカナで書かれてゐたりして、まるで宇宙人扱ひであります。その言動にほあしさんは圧倒されまくりのなです。
でも、仕方ないでせうね。キクチナオエが連載を始めた時は、まだ芽が出ないもののすでにデビューを果たしてゐるプロだつたのに反して、ホアシカノコはまだ19歳(当時)の専門学校生で、福岡からムリヤリ上京させられたのですから。あの横見氏に突つ込めるには、年季が必要でせう。

ほかの登場人物(もちろん全員実在)について。
キクチ版では割とカッコ良く書かれてゐた編集長は、常に睡眠不足で背後霊のやうに表現されてゐるのです。口からはエクトプラズムみたいなものを吐き出してゐるし。しかし第6旅「初めての代理案内人」では、大好きなスイッチバック巡りが出来たせいか、すこぶる元気でした。
編集者カミムラは割と普通。ポヤーつとした感じはなくなりました。名物の「カミムラメモ」はもう無いのですね。作中でもメモを取る描写はほとんどなかつたやうです。
そして村井美樹さん。女神だつたり天使だつたりします。彼女のお陰でこの作品は成り立つてゐると申せませう。マネージャーのヨネダさんも花束を持つて登場しました。やはりこの人は変な人のやうです。

横見浩彦といふ人物を掴みきれず、まだまだ手探り状態のほあしさんですが、今後の展開には期待が持てます。読者が前作のイメエヂを持つてゐるだけに、書きにくいでせうが。
ガンバレ!と応援したくなる漫画であります。

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真説 大相撲見聞録


真説 大相撲見聞録

真説 大相撲見聞録
石井代蔵【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1987(昭和62)年2月発行


「異能力士」が好きだ、と石井代蔵氏はいひます。
石井氏の定義によると、異能力士とは「理にかなわない相撲、他の者がやれば絶対勝てないという相撲で勝つ異な相撲取りである」さうです。相撲評論家の彦山光三といふ人が、若ノ花勝治(後の横綱初代若乃花幹士)を評してさう表現したのが最初だとか。
かういふ力士たちがもうゐないと嘆きます。そもそも体格・体力に於いて劣る力士が大きな相手と対戦する際に、互角に戦へるやうに工夫した結果、異能力士が誕生するのでせう。

さういへば、昔は本当に「小さい力士」がゐました。明治の玉椿、大正の大ノ里など、一般人の平均よりも小さい力士が三役や幕内上位を務めたのです。
では今はどうか。全般に力士は大型化し、体型も標準化しつつあるやうです。標準化はチェーンストアだけで十分だと思はれます。
やはりあの新弟子検査といふものが問題ではないのか。身長173センチ以下、体重75キロ以下の者ははじき出される制度は好い加減にやめませう。どうせやるなら体力検査だけで良いのに。

いかん。最近相撲を語ると愚痴つぽくなります。本書の『相撲講談』の章でも読みませうか。
双葉山は69連勝ではなく87連勝してゐたとか、土俵際ぎりぎりで仕切る放駒長吉とか、相撲にまつはる下ネタとか、興味深い話がたくさん詰まつてゐます。
これを読んで、三月場所を観戦するとしませう。ではさやうなら。

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人間万事塞翁が丙午


人間万事塞翁が丙午 (新潮文庫)人間万事塞翁が丙午 (新潮文庫)



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人間万事塞翁が丙午
青島幸男【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1984(昭和59)年8月発行


青島幸男さんは才能の塊のやうな人でした。
放送作家出身なのですが、それに飽き足らず様様な、華華しい活動を見せてくれました。
私の年代ですと、俳優として意地悪ばあさんを演じてゐた頃が印象に残つてゐます。それから、これは自分たちより上の世代がリアルタイムで接してゐると思ひますが、クレージーキャッツに提供した作詞の傑作群。私はクレージーが大好きでして。
政界進出後も、二院クラブ時代は勢ひがありました。ま、都知事としてはごらんの通りでしたがね。

そして小説家としての活躍。青島幸男の歴史の中では、小説を書き始めたのは遅い方でせう。
『人間万事塞翁が丙午』は直木賞を受賞するのですが、何と本作が処女作だつたのです。驚きですね。
主人公「ハナ」は青島さんの実母がモデルださうです。ハナ肇とは関係ないやうです。

昭和12年、支那事変の年に、ハナの夫・次郎に召集令状が来るところから話が始まります。
ハナの家は東京下町で繁盛してゐる弁当屋さん「弁菊」。ここを舞台に、うるさくて人情に厚く、口は悪いが素直で飾らない人たちが入り乱れて、この小説を盛り上げます。
義父・義母との確執、夫の俺様ぶり、二人の息子の将来などハナはいつも悩まされながら、何とか戦中・戦後を嫁として、妻として、母として乗りきり、たくましさを増していくのでした。
そんなに苦労してきたのに、嬉しい孫も出来たのに、それなのに、ああ...

書き方によつては、まことに暗い小説となりかねない内容なのですが、深刻さは感じさせずカラッとしてゐます。
何よりも文章のリヅムが良い。畳み掛けるやうな会話のテムポも心地良いのであります。テレビで仕事をしてきた青島さんならではの小説と申せませう。
残念ながら絶版ださうで。しかし入手は比較的簡単であります。
では。

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汽車旅12ヵ月


汽車旅12カ月 (河出文庫)汽車旅12カ月 (河出文庫)


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汽車旅12ヵ月
宮脇俊三【著】
河出書房新社(河出文庫)刊
2010(平成22)年1月発行


汽車旅といふ言葉も死語に近いですね。
今の人たちは、鉄道車両のことを何でも「電車」と呼称します。大井川鐡道の蒸気機関車牽引列車に乗つた時、乗客の一人が「SL電車」と言ふのにはさすがに驚いた。一々訂正しても「ケッ、五月蝿いをやぢだぜ」などと煙たがれるのが関の山でせうから黙つてゐましたが。

しかし宮脇俊三さんの場合、まぎれもなく汽車旅なのであります。
「汽車旅12ヵ月」のタイトル通り、1月から12月まで、各月汽車旅をするにあたりどのやうな魅力があるのかを弁じた書物です。
例へば2月。厳寒の季節で観光客が減るのですが、その分指定券や寝台券はすぐに取れる。山陰へ行けばカニが美味い。といふわけで宮脇さんは毎年のやうに2月は山陰旅行を愉しんでゐました。
あるいは5月。黄金週間を過ぎれば絶好の旅行シーズンで、皆が敬遠する6月も旅館などが空いてゐるからサービスも良い、また昼が長いので観光に時間を多くさける。
なんだかんだ言つて汽車旅に出かける口実のやうにも思へて、微笑ましくなります。

もつとも本書の初版は1979(昭和54)年。旅行事情も今とは大いに違ひますので、ガイド本としては期待しない方がいいでせう。老婆心ながら。あくまでも宮脇俊三といふ紀行作家の鉄道エッセイとして堪能すれば良い。
今年になつて河出文庫として再刊されたのも、版元がさういふ価値を認めたからでせう。
ではご無礼します。さやうなら。

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ローカル線ガールズ


ローカル線ガールズローカル線ガールズ


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ローカル線ガールズ
嶋田郁美【著】
メディアファクトリー刊
2008(平成20)年1月発行


第三セクター「えちぜん鉄道」に乗務するアテンダントの話です。
えちぜん鉄道の前身は、京福電鉄福井支社。わづか半年の間に正面衝突事故を二度も起し、国交省より運行停止命令が出された、あの電鉄会社です。
当時は、もう再開は無理だらうと思はれてゐました。このまま廃線になるのだらうと。
運行停止中の頃、私は福井を訪れ京福電鉄の情況も見て来ました。駅や線路などの施設は荒れ放題になつてゐたのです。本書でも少しふれてゐますが、閉鎖された駅舎やホームは芥の山で、弁当を食べた後の容器や空のペットボトルなどが散乱してゐました。目を覆ふ惨状。人心は荒廃してゐるなあ。
線路は錆だらけで、とてもここに再び電車が走る日が来るとは思へませんでしたね。

それが第三セクターで復活したといふことで、これまた話題になりました。本書を読むと、いかに多くの人が鉄道に頼つてゐたのかが分かります。しかし税金を投入してまで走らせる電車なので、失敗するわけにはいかない...
そして、えち鉄の誕生とともに導入されたのが女性アテンダントでした。車掌ではなくアテンダント。導入に際しては賛否あつたやうですが、「安全のための投資」の意味を込めて決定したさうです。

その「えち鉄アテンダント」のリーダー、嶋田郁美さんがその日常を教へてくれます。
アテンダントの主要業務は「切符販売・観光案内・乗降補助」が三本柱ださうです。しかし、基本的に乗客の要望には可能な限り応へるといふ姿勢で、沿線の植物についての質問、病院に耳鼻科があるかどうかなどの問い合せにも「わかりません」とは言へないのです。アテンダント同士の情報交換や各部署との連携、時には他の乗客からの情報も駆使して何とか対応します。この努力には頭が下がるのであります。

もちろん失敗もあり、乗客を怒らせてしまふことも。ほとんど嫌がらせのやうな苦情、マナーの悪い乗客とも格闘するしんどい仕事なのです。
それでもアテンダントたちは、仕事を嫌だと思ふことなく、それどころか常に反省して、よりお客様に喜ばれる方策を考へてゐるのです。何だか出来すぎですね。

接客にかかはる人たちには一読の価値があると思ひますよ。自らと比較して絶望するのも良いでせう。あるいはいつもブツブツ不平不満をもらす向きにも本書を読ませませう。少し大人しくなることでせう。

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出身地でわかる中国人


出身地でわかる中国人 (PHP新書)出身地でわかる中国人 (PHP新書)

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出身地でわかる中国人
宮崎正弘【著】
PHP研究所(PHP新書)刊
2006(平成18)年1月発行


日本でいふ「人国記」の中国版を目指した本のやうです。
「人国記」とは、各地方の出身者から風俗習慣・そこに住む人たちの気質などを比較してみたりするもの。よく見かけるのは47都道府県の県民性とか風土を雑学風に記した書物ですね。○○県人は目立ちたがり屋とか、△△県人はおつとりした性格の人が多いとか。そんな簡単に決め付けてくれるなと憤慨する向きもあるでせう。自分が住む愛知県で語るなら、尾張と三河は違ふし、三河でも豊田と岡崎は同じではない。
そもそもさういふ書物を世に出す人は、どのやうな取材活動をしてゐるのでせう。

この『出身地でわかる中国人』は、まづ執筆に相応しい人が書いたといふ点が第一の勝因ではないでせうか。
なにしろ中国といつても一つの国として語るには広すぎるし、このテエマで1冊書ける人はさうゐないでせう。何度も中国各地へ行く人は多いかも知れませんが、取材力構成力筆力を兼ね備へた人物はぐつと減ることでせう。

全省を個別にとりあげてゐては大変といふことで、5つの「経済圏」に分けて解説してゐます。
乱暴にまとめれば北京・上海・広州・福建省・旧満州の5つらしい。中国人自身が「北京愛国」「上海出国」「広東売国」と評してゐるさうです。
各省の大物出身者が紹介されてゐて、断片的な歴史の知識が得られます。後半になると、著者の見聞録の趣になつてきます。中国各地のガイド本としても読めるでせう。著者の思想的立場と相容れない人もゐるでせうがね。
でも、やはり一つの国として扱ふのは無理があるかも...

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日本人の知らない日本語2


日本人の知らない日本語2日本人の知らない日本語2



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日本人の知らない日本語2
蛇蔵&海野凪子【著】
メディアファクトリー刊
2010(平成22)年2月発行


ベストセラアの続篇でございます。
面白さと薀蓄の深さは前作を上回つてゐるのではないでせうか。

表紙を捲ると、カヴァーのソデ部分の4コマ漫画で、さつそく問題提起(?)
海外の「にほんご」教科書を手に入れたなぎこ先生。例文を読むと、「それは花ですか?」→「いいえ馬です」...
日本でも英語教科書などで、文法を説明するだけの例文に、突込みを入れたくなるものが多かつたですね。
私が中学の時、教科書に“Is this a book or a notebook?”といふ例文があつて、我々は皆、「本とノートの区別もつかんのかい!」と嘲笑してゐたものです。ニューホ○イズンといふ教科書でした。

「ら抜き言葉」についての考察があります。私も少年時代は「ら抜き」を見聞すると、「乱れとる!」と憤慨したものであります。噴飯物なのです。標準語以外は日本語にあらずといふ思想が背景にある。それに気付いて以来、自分も「ら抜き」を駆使してゐます。
日本語教室で教へる文法は機能的。敬語を3ステップに分けてゐるので理解しやすい。マンガによると、日本人から敬語を教へてくれ、と頼まれる外国人までゐるやうですね。ああ嘆かはしい。

なぎこ先生の日本語学校では、言葉を教へるだけではなく遠足を企画して日本の文化も紹介してゐるさうです。マンガでは神社へ行つて、お参りをします。ここに出てゐることは、恥づかしながら私は知らないことばかりです。おみくじの良い順番とか。ま、タイトルも「日本人の知らない~」だからな、と自分を慰めたりして。

通常続篇といへば、同工異曲でしかも前作に見劣りするのが通例ですが、本書に関してはその心配はなささうです。しかし未読の方はこちらより先に前作から読んだ方が良いでせう。
と、私が薦めるまでもなく本書もベストセラア入りしてゐるやうです。
では、ご無礼いたします。

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