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鉄娘な3姉妹


鉄娘な3姉妹 (サンデーGXコミックス)鉄娘な3姉妹 (サンデーGXコミックス)



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鉄娘な3姉妹
松山せいじ【著】
小学館(サンデーGXコミックス)刊
2009(平成21)年6月発行<第1巻>


かなり変なマンガであります。
鉄道マンガですが、月刊IKKIで連載されてゐた『鉄子の旅』初代編集である「イシカワ」さんが、サンデーGX誌上で手がけたもの。IKKIのテツ編集長といひ、自分の趣味で連載を決めてしまつて良いのでせうか。小学館は大丈夫なのか。既に2巻まで出てゐて、3巻も近刊となつてゐます。ところで、「鉄娘」は「てつこ」と読みます。念のため。

『鉄子の旅』に比べれば、鉄道情報マンガの面がより強くなつてゐます。松山せいじさん自身がテツであることが理由のひとつでせう。紹介する路線・車両は鶴見線、トンネル駅、いすみ鉄道&小湊鉄道、急行能登、加賀一の宮駅など『鉄子の旅』とカブつてゐます。テツが紹介したいものは、大体似てしまふのでせうかね。
鉄道の描写はかなり細部にこだはり、玄人も唸らせます。そこまで描いても分かる人は少ないのではないかと思つたりもしますが、作者のプライドなのでせう。「グッたいむ」の投稿といつても、何ソレとつぶやく人が多いのでは。

タイトルの3姉妹とは、伝説(?)のテツと呼ばれる福音寺国鐡の娘たち、長女の福音寺美章(撮りテツ)・次女の福音寺美唄(乗りテツ)・三女の福音寺備後(模型テツ)のこと。松山せいじさんらしい萌えキャラですが、リアルな鉄道描写を背景にして、浮いてゐます。故あつて、全国の親戚に3人別々に預けられてゐたのが、10年振りに東京駅で再会し、父を捜す旅に出るのであります。連載マンガとしては、設定に少々無理がございます。毎回同じ展開となるため、回を重ねる毎にゲストキャラにも工夫が見られますが、テツ以外にも読者を増やすならば、ここらで思ひ切つた新展開を望むところであります。
しかし鉄道に対する愛情は一級品ですね。『鉄子の旅』の菊池直恵さんが非鉄で終始醒めた視点で描いてゐたのと好対照なのです。案外な長期連載になるのかも知れませんね。

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なぜ起こる鉄道事故


なぜ起こる鉄道事故 (朝日文庫)なぜ起こる鉄道事故 (朝日文庫)



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なぜ起こる鉄道事故
山之内秀一郎【著】
朝日新聞社(朝日文庫)刊
2005(平成17)年7月発行


著者の山之内秀一郎氏は元JR東日本会長であります。
例の福知山線脱線事故が起きたのが2005年4月だから、この文庫版が出る直前とも言へませう。世間の目が、鉄道事故に対して厳しくなつた頃でせう。タイムリーとも言へるが、間が悪いとも申せませう。
章立ては4章からなりますが、鉄道が誕生して以来の、鉄道事故の歴史を時系列で述べてゐます。第3章のあたりから著者が実際に経験した時代になり、書き方にも変化が表れます。

それにしても鉄道黎明期の事故の多さ、未熟さには仰天するばかりであります。まづは走らせる事が第一で、止めることは二の次の時代があつた。走らせるだけですごいだらう、と言はんばかりであります。事故が起きたら、繰り返さぬやうに対策を進めるといふ、安全対策としては完全に後手に回つてゐたのでした。
安全対策の一つの完成形といふべきものが、東海道新幹線であります。悪い言ひ方をすれば、人間を信用しないシステムと申しますか。しかし本書でも触れられてゐるやうに、旧国鉄では組合問題が厳然としてありまして、改革は進まなかつたのであります。折角世界に冠たる新幹線も、諸外国の追ひ上げを受け、しばしば追ひ越されてきました。
組合は「俺達のウデを信用しないのか」といふが、問題のすり替へでありませう。仮に運転士が居眠りして夢を見てゐても、安全に停止するシステムが必要だつたのです。無論居眠りを奨励するわけではありませんが。

著者は言ひます。新幹線が安全であるのは、そのシステムに理由がある。しかしだからと言つて「安全の最後の決め手はシステム」といふ訳ではなく、やはり最後の決め手は人間だと思ふと。ただそれが安易な精神論に陥るのを恐れるとも述べてゐます。その言やよしと申せませう。かかる人物がトップにゐるなら、差し当たり安心であります。
しかし、一部の意見で、JR西日本にもこんな人材がゐたなら福知山線事故は起きなかつただらう、といふのは違ふねと思ひます。西と東では周囲の環境がまるで異なつてゐるとだけ述べてこの場は去ることにいたします。
(そもそも乗り物は危険がいつぱいであることを認識して利用した方が良い)

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私家版 日本語文法


私家版 日本語文法 (新潮文庫)私家版 日本語文法 (新潮文庫)



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私家版 日本語文法
井上ひさし【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1984(昭和59)年9月発行


井上ひさしさんが、新潮社のPR誌「波」に連載した日本語文法エッセイであります。もう30年くらゐ前の作ですが、内容は古さを感じさせません。「波」とは、本屋さんが無料でくれるものです。なにしろPR誌ですからね、他にも「図書」(岩波書店)・「青春と読書」(集英社)・「本の旅人」(角川書店)・「ちくま」(筑摩書房)などは、よくもらつてゐました。本屋に就職してからは急速に興味を失つてしまひました。不思議なものです。
それはともかく、その「波」に34回、まる3年間に渡つて書かれたものなのに、まるで書き下ろしのやうな統一感があります。本来無味乾燥な文法の話ですが、本書は全く違ひます。それどころか、抱腹絶倒と言つてもいいでせう。
こんな文法講義ならば、毎回欠かさず出席して拝聴したいと思はせます。

日本語の正書法が存在しないとの指摘はここでもあります。そもそもそれを認めず、日本中津津浦浦同じ言語を駆使してゐるといふ前提に立つのが従来の国文法ではないでせうか。
本書で感じるのが、形容詞や副詞などの、「飾る」言葉へのこだはり。紋切り型の文章を避けやうとすれば、日本語ではたちまち修飾語に行き詰ります。劇作家兼小説家の作者としては、常にもどかしい思ひをしてゐたのではないでせうか。
ほかに、漢字の問題や、仮名遣ひ、句読点、擬音、外来語など、論は広範にわたります。引用する文章も、いはゆる名文ばかりではなく、新聞のチラシ・市民憲章・落語・歌謡曲の歌詞・少しエッチな本など身近なものを取上げるのです。

文句の付けやうがない快作でございますが、一点だけ訂正したい箇所があります。「擬声語」の章にて、
「ゴルゴ13は本名を東研作という国際的な殺し屋で」とありますが、東研作はもう死亡してゐることが劇画中で明らかにされてゐますね。その後も「この人物が現在のゴルゴ13ではないか?」といふエピソードは繰り返し出てきますが、どれも否定されたり、真相は闇の中だつたりして、現在に至るまで彼の正体は分からないのであります。
ま、どうでも良いことですがね...

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私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。


私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。 (講談社文庫)私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。 (講談社文庫)



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私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか
島村英紀【著】
講談社(講談社文庫)刊
2007(平成19)年10月発行


島村英紀氏は、有名な地震学者。と言ひつつ、不勉強な私は知りませんでした。
この島村氏が、2006年2月1日、突然の家宅捜索を受け、そのまま逮捕され拘置所で171日も過ごしたといふ、およそ日常とはかけ離れた経験を綴つた手記であります。
容疑は詐欺罪。島村氏が勤務する北海道大学の訴へであります。そもそも島村氏が開発した海底地震計なるものを、ノルウェーの大学に売つて研究費を得たのは、業務上横領である、といふのが北大の主張でした。しかし業務上横領では立件が無理なので、ノルウェー・ベルゲン大学を被害者とする詐欺罪で刑事告訴されたのでした。
ところがベルゲン大学側は、被害に遭つた覚えはないと証言します。「被害者がゐない詐欺事件」といはれる所以であります。

それでも島村氏は逮捕され、拘留されてしまひます。しかし本書の内容は、検察批判とかではなく、人が逮捕され拘留生活を送るとはどういふことか、その一点であります。しかも怒りや悔しさを抑へ、淡々と綴つてゐるのです。
実に冷静で、客観的な視点であります。突然の逮捕劇にも、「なるほど、逮捕とはこんなものか、と他人事のように思っていた。」
札幌まで同行せよ、との告知にも「なるほど、護送なのだな、と分かる。」
手錠部分に掛けるカバーの名称を尋ねたり(名前はない、との返答だが)して余裕綽綽であります。
空腹を覚えたら遠慮なく食事を要求するなど、堂堂としてゐるのでした。
しかも各所にユーモアさへ湛へ、笑ひを誘ひます。独房へ入れられる前に検尿用の紙コップを渡されるのですが、「覚醒剤の検査であろう。まさか、親切にも、糖尿病の検査をしてくれるわけではあるまい。」
並みの神経ならまいつてしまふところです。狭い独房も「船のキャビンよりましだ」とポジティブであります。全てにおいて前向きな考へ方なので、読んでゐて痛快にすらなつてくる。
取調べに対しても、検事に対して同情的な記述さへあります。激しい自白強要もあつたやうですが、拷問はされてゐない模様であります。島村氏の社会的地位を考慮したのか。

圧巻は、毎日三度三度の食事の内容を克明に記録してゐることです。
著者本人も、自分は食べ物に興味がある方だと述べてゐますが、さすがに全食事のメニューを記録するとは、並ではありません。どうやら結構豪華なメニューです。デザートも毎回付いてゐて、札幌拘置所は特に食事が良いのだとか。逆に最悪なのが東京ださうです。毎回麦飯が付いてきて、美味いが量が多すぎる、献立が麺類の時も麦飯が付くので、量が多いだけでなく炭水化物の取りすぎである、などと論評してゐます。
自分でも少々こりすぎと思つたか、「食べものに興味がない読者は、この節は読み飛ばしていただいて結構である。」

結果的に島村氏は171日の拘留後に保釈され(保釈を告げられたのが夜だつたので、布団をもう敷いたから明日にしてほしいなどと言ふのがまた笑へる)、懲役3年・執行猶予4年の判決が下されます。結局検察の面子の犠牲になつたとの見方が今となつては強まつてゐます。一度起訴されたら、例へ事実がどうあれ、それを覆すのはまことに困難であることが改めて分かります。極端に言へば、君も僕も、いつかうなるか分からないのだぜ、といふ感じです。恐ろしい。
なほ、裁判そのものに対する島村氏の意見や主張は、自身のホームページで展開されてゐるといふことです。

では、おやすみなさい。

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旅の終りは個室寝台車


旅の終りは個室寝台車 (河出文庫)旅の終りは個室寝台車 (河出文庫)



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旅の終りは個室寝台車
宮脇俊三【著】
河出書房新社(河出文庫)刊
2010(平成22)年3月発行


宮脇俊三氏の鉄道旅は、一人旅が基本であります。
理由のひとつは、自ら「児戯に類する行為」と卑下する(実際にはさう思つてゐないでせうが)だけに、他人に知られずひつそりと旅をしたい、との思ひではないでせうか。
さらに別の理由として、同行者がゐると気を遣ふからと本文中に記してゐます。これは分かりますねえ。相手が鉄・非鉄にかかはらず、自分の行動が制限されるのは否めないからです。大体に於いて、僕がやりたい事は君には興味がないし、君がお薦めする行程は僕にはつまらないのさ、といふ関係に陥りがちです。

ところが、『旅の終りは個室寝台車』では、常に同行者がゐます。宮脇さんは『時刻表2万キロ』でデビュー以来、内田百の(阿房列車の)後継者といふ評を得てゐましたが、本作が一番阿房列車の路線に近いのではないでせうか。阿房列車にはヒマラヤ山系君こと平山三郎氏が、なかば保護者のやうに付き添ひますが、本書では藍色の小鬼こと藍孝夫氏が同行します。作家先生に対して言ひたい放題の編集者でございます。

10の旅程が収録されてゐます。作者によると、「東京-大阪・国鉄のない旅」以外は、すべてかねてより乗つてみたかつた列車もしくはコースださうです。鉄にとつては魅力的な旅でせうが、非鉄の小鬼は退屈してゐます。
6時間以上各駅停車の電車に乗る飯田線の旅では、予防策として中島みゆきのテープを用意するのでした。ところが、中島みゆきを宮脇先生が心ならずも聴くはめになつて、小鬼が満足さうに車窓を眺めてゐる、といふ逆転現象が起きたりして笑へます。

予算的には結構質素な旅です。食事も質素。それどころか昼食を食べそびれて、売店のポテトチップスで済ませた事もあります。爆笑。表題作「旅の終りは個室寝台車」は例外的に豪華な車両に乗り込みます。A個室寝台は私の少年時代では日本で一番豪華な鉄道客室で、憧れの的でありました。本文中にあるやうに、天井は無意味に高く、幅は狭いいびつな設計ですが、それでも当時主流の3段式開放型寝台とは雲泥の差で、いつかは乗るぞと心に決めてゐたのです。
大人になつて初めて乗れた時は、すでにそれより上位の「ロイヤル」(北斗星)が登場してゐましたが、やはり嬉しかつたものです。流れる車窓に身を任せながらビールを呑む。こんなに幸せでいいのだらうかと。宮脇さんも、これはむしろ「独房」だと悪態をつきますが、それでも嬉しさうです。かうでなくてはいけません。
皆も、読みませう、乗りませう。

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中国ニセモノ観光案内


中国ニセモノ観光案内 (講談社+α文庫)中国ニセモノ観光案内 (講談社+α文庫)



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中国ニセモノ観光案内
田中淳【著】
講談社(講談社+α文庫)刊
2008(平成20)年5月発行


ニセモノ大国といはれる中国。「まえがき」で著者はイキナリ「中国のニセモノ体質は未来永劫、変らない」といふのが結論だ、と断じます。長年に渡り他国から国土を蹂躙されてきた歴史が関係あると分析してゐます。
さうかも知れません。とにかく未来の展望が描けない国でしたから、「今さへよければいい」といふ刹那主義がはびこるのも首肯できるところであります。

DVD海賊版は、最も知られるところですが、以前のやうに粗悪なコピー品ではないさうです。画質も本物と変らず、映像特典などは本物よりも充実してゐるとか。これに関る人たちの技術はすこぶる高く、本人たちもプライドを持つて(?)ゐるやうです。これだけのウデがあるなら、もつと別の、まつとうな方面で活躍できるのではないでせうか。
ニセモノを作る側は「需要があるから作るだけ」と言ひ、買う側は「安いから買ふのよ」とニセモノと知つて購入する。まさに今が良ければそれで良し。知的財産といふ概念はこの人たちの頭にはまるで無いのでせう。

マクドナルドとケンタッキーのパクリである「マクタッキー」。著者の報告によると、味は本家よりもいいかも...と意外な言葉。ここでも、これだけ美味しいものを提供しながら、店は怪しいニセモノ。もつたいない話です。
それとは別に、日本人にお馴染みのニセモノ食品。北京市工商局の調査結果では、控へ目に見積もつても300品目のニセ食品が出回つてゐるさうです。これでは、一般市民が本物を手に入れるのはギャンブルみたいなものでせうか。
例へばニセ豚肉を作る手順が説明されてゐますが、これまた手が込んでゐる。DVDと違ひ完成度は高くないので、市民の評判は悪いのです。

さらに、雨が降つて欲しくない日には「ニセ晴天」、はげ山を手つとり早く緑にするため、山に緑のペンキを塗る(!)「ニセ緑化」、中国版新幹線工事に使はれた「ニセ石灰石」(恐ろしい)、「ニセ純金」「ニセ公文書」「ニセパンダ」(犬の毛をパンダ色に染める...)と、枚挙に暇がないのであります。
では本書は、これらニセモノにまみれた中国を非難し糾弾する目的なのかといふと、さうではありません。著者は、中国のかういつた姿勢は今後も変らないと見てゐます。本書はタイトル通り、ニセモノを通した中国の裏観光ガイドと申せませう。この呆れた世界を笑ひとばせ、といふところですね。読み物として面白い一冊でした。

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家族八景


家族八景 (新潮文庫)家族八景 (新潮文庫)



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家族八景
筒井康隆【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1975(昭和50)年2月発行
2002(平成14)年2月改版


主人公の火田七瀬は精神感応能力者、即ち人の心を読み取る能力を有する女性です。
その能力を人に悟られぬため、同じ職場に長く勤められず、職場を転転としても不自然ではないお手伝ひさんをしてゐるのです。
「無風地帯」から「亡母渇仰」まで8篇の短篇からなる連作集で、それぞれの家族の内実が七瀬の心によつて暴露されます。えげつない。

七瀬が住込みで働く家庭は、表面上はおほむね良い家庭と周囲に思はれてゐるところであります。中には「亡母渇仰」の清水家のやうに嘲笑を浴びてゐる家もありますが、ま、外面を飾ることで内情を隠蔽することに成功してゐると言へませう。
ところが七瀬がその家に入ると、隠し事はすべて明るみに出てしまふのであります。どこの家庭も、嫌な奴か悪い奴ばかりです。「日曜画家」の竹村天洲は例外かと思はれましたが、やはり正体は欲望の塊のやうな人物でした。
これらの家族、八景とも特別な悪人を描いてゐるのかと問へば、おそらくさうではありますまい。いかにも、どこかにありさうな家族ばかりなのです。自分を振り返つてみますと、我が家は全く違ふぜ、と言ひきれるかどうか。私も内心では、他人に知られると恥づかしくて死にたくなるやうなことを考へることもあるのです。

人の心を読むことができるといふことは、恐らく悲しいことでせう。その能力を知られまいとするために、七瀬も「水蜜桃」では主を発狂させ、「亡母渇仰」では棺で生き返つた女性を見殺しにしました。これはやむを得ないのでせう。一度その事実が広まつたら最後、ちばあきおの『ふしぎトーボくん』みたいになつてしまふでせう。(これは悲しい漫画ですよ。)
フィクションで良かつた、と安堵するところですが、一方で「ひよつとしたらどこかにテレパスが...」と一瞬不安がよぎる恐ろしい読み物と申せませう。

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プロ野球 名人列伝


プロ野球 名人列伝 (PHP文庫)プロ野球 名人列伝 (PHP文庫)



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プロ野球 名人列伝
近藤唯之【著】
PHP研究所(PHP文庫)刊
1996(平成8)年4月発行


今年も球春の季節がやつてまいりました。
我がスワローズはまずまずの滑り出しと申せませう。今日も館山の好投とデントナの猛打で広島東洋に打ち勝つたのであります。しかし本日は読売のコーチ・木村拓也氏が亡くなつたことで、全球場で追悼ムードでした。まだ37歳、あまりに早すぎます。

さて『プロ野球 名人列伝』では、プロ野球で名人と呼ばれる人のうち、根本陸夫から野茂英雄まで18人の名選手・監督を取り上げてゐます。それぞれに個性的な面々で、泣ける挿話が盛りだくさん。それらをお馴染みの近藤節で我々読者を酔はせます。
眼にボールが直撃した三宅秀史の悲劇。病院で聞く看護婦長の一言とか、奇行の人と呼ばれた榎本喜八の素顔、豊田泰光が長嶋茂雄に博多の芸者を手配する話、巡業中の双葉山を倒した稲尾和久の父、田淵幸一の電撃トレード秘話、トルネード投法で捕手から顔をそらせても視線は途切れないと語る野茂英雄など、各々で一冊の評伝を書いて欲しいほどであります。
小川健太郎の「背面投げ」についても、意外な話が。これは王貞治に対して、タイミングをずらさうとして即興で投げたやうな印象がありましたが、実際には捕手の木俣達彦と入念な打合せをした上での、予定通りの行為だつたらしいのです。王選手は「王シフト」のみならず「背面投げ」までさせてしまふほどの大打者とも申せませう。
かかる過去のプロ野球人の話を知ることで、観戦もより面白くなるといふものです。
あなたも一度近藤節を堪能しませう。

では、今夜はこの辺で。ご無礼します。

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翻訳読本


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翻訳読本
別宮貞徳【著】
講談社(講談社現代新書)刊
1979(昭和54)年4月発行


著者の別宮貞徳氏はかつて「欠陥翻訳時評」などを通して、日本の翻訳界のレベルアップに寄与した人です。
兄上が音楽家の別宮貞雄氏であることは、割と最近知りました。迂闊な事であります。ベックなんて珍しい苗字なので、当然関連を疑ふべきでした。ちなみに別宮貞雄氏は東宝映画『マタンゴ』の音楽を担当してゐます。

『翻訳読本』では、そもそも翻訳とは何か、翻訳に必要なのは何かといつた原論から、実際に翻訳をするに当つての考へ方、技術論が開陳されてゐます。
「1.第一に必要なこと」では、翻訳を志す人たちが日本語をあまりに軽視(あるいは無視)してゐることに警鐘をならします。翻訳をする外国語の知識は当然必要ですが、それ以上に、日本語の力が不可欠であります。
「2.美しい翻訳のために」...美しいなどといふ言葉が出て「うは」と思ひましたが、丸谷文章読本により、文章の最低条件をさぐります。
「3.翻訳とは意訳である」...章のタイトルがズバリ内容を示します。日本語の表現力が乏しいのを「私は逐語訳主義者でして」などと逃げるのは卑怯な態度ですが、有名な本でもさういふ翻訳が多いのです。
「4.日本語らしい表現」は、本書の眼目と申せませう。日常語を使ひ、漢語を控へ目にする。人称代名詞を一々訳さない。日本語ではどう表現するかを忘れると、「かれは」「かの女は」を連発してしまふのです。関係代名詞が出現すると、どうしてもその後から訳して、「・・・スル所ノ」で片付けてしまふ。さすがに最近はあまり見かけませんが。英語と日本語の語順の違ひに拘泥せず、頭から訳してしまへと別宮さんは叫びます。
「5.相似ではなく相同を」では、「同等効果の法則」を説きます。見かけの相似に惑わされてはいけません。
「6.センス・オブ・ヒューマー」...ユーモアや洒落の翻訳はほとんど不可能といつていいのではないか。その情況のをかしみを、どのやうな日本語で表現するのか。これは教へてできるものではありますまい。自ら磨くものでせうね。
「7.常識と想像力を働かせよう」...ある欠陥翻訳をテクストに、無神経な翻訳の実例を示します。そしてこれらは、ほんのわづか「常識と想像力」を働かせたら避けられる失敗が多いのです。自分の訳文を推敲しないのでせうかね。

翻訳を目指す人はまづ本書を読みませう。実例や演習問題も多く、真面目に取り組めば読前と読後ではかなりの差が出てゐることでせう。

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特急北アルプス殺人事件


特急北アルプス殺人事件 (中公文庫)特急北アルプス殺人事件 (中公文庫)



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特急北アルプス殺人事件
西村京太郎【著】
中央公論新社(中公文庫)刊
2001(平成13)年7月発行


また悲しい知らせを聞いてしまひました。といつても大多数の人にとつてはどうでも良い事でせうが。
福島県に本社を置く第三セクタア鉄道会社「会津鉄道」といふのがあります。かつての国鉄会津線。 ここで活躍してゐる、キハ8500系といふ気動車(ヂーゼルカーのこと)がありますが、どうやら間もなく姿を消すやうであります。ああ。
この車両、元は名鉄特急「北アルプス」として走つてゐたのです。「北アルプス」としては2代目の車両で、初代はキハ8000系といふ気動車が使はれてゐました。国鉄~JR高山線に毎日乗り入れてゐたのです。

ちよつとおさらひをしませう。JR東海としては、当時特急「ひだ」を、キハ80系なる一時代を築いた気動車で運行してゐたのですが、老朽化のためキハ85系といふ新車を投入しました。さうなると名鉄のキハ8000系がかなり見劣りしてしまふので、こちらもキハ8500系を新造し、置換へたのであります。
しかし「北アルプス」は名鉄の特急なので、JR線内では思ふやうなダイヤで走れず、「ひだ」の引き立て役になつてしまつた。そんなこんなで乗客も減り、名鉄も手のかかる気動車を手放したいとJR線から撤退を決めました。
ところがキハ8500系はまだ車歴は浅いので、会津鉄道に売却してしまつたといふ訳です。

会津鉄道では「AIZUマウントエクスプレス」なる愛称を与へられたのですが、用途としては、もつぱら快速や各駅停車に駆使されてゐました。何ともつたいない! 宝の持ち腐れとはまさにこのことでありませう。私は泣きたくなりましたよ。そしてこのまま引退か...より車歴の古いキハ85系はまだバリバリで活躍してゐるといふのに(そしてそれ以上の性能を有するのに)何と非情な。ほとんど持てる力を発揮出来ずに終らんとしてゐる彼の人生とは一体何であつたか...私は一掬の涙を禁じえないのであります。

さて『特急北アルプス殺人事件』は、まだキハ8000系時代の物語です。一応ミステリーなので内容は書きませんが、アリバイを崩す決め手が「そんな事あり得るのか?」と突込みたくなるやうなことでした。私たちは微苦笑しながら読み進めるのが、正しい態度と申せませう。しかし、駅員のせりふで、キハ8000系はキハ80系を参考にしたといふのは違ふでせう。参考にしたのはキハ58ですね。「北アルプス」は準急→急行→特急と出世してきた列車ですが、その間車両は一貫してキハ8000系でした。特急に格上げした時、キハ80系なみの「ヒゲ」が付きました。どうでも良い情報ですね。

再度いふ。本書は微苦笑しながら、最後まで読むのが正しい読書法でございます。

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本多猪四郎全仕事


本多猪四郎全仕事 (ファンタスティックコレクション)本多猪四郎全仕事 (ファンタスティックコレクション)



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本多猪四郎全仕事
竹内博【編】
朝日ソノラマ刊
2000(平成12)年5月発行


何でも米国でまた「ゴジラ」映画を作るといふ噂が。
四月馬鹿か?と思つて調べると既報ニュースでした。しかも3D映画だと!不安ですなあ。どうなつてしまふのでせうか。1998年のハリウッド版『GODZILLA』は散散の評価でしたから、ファンは期待よりも拒否反応が強いやうです。もつともアレは、ゴジラを名乗らなければ普通に鑑賞できる映画だと私は思ひました。
でも、頑迷な意見でせうが、ゴジラに関しては3D映画より着ぐるみのTOKUSATSU映画を観たいものです。古い?

東宝のゴジラといへば、本多猪四郎監督。世界中にファンがゐる名監督であります。朝日ソノラマ「ファンタスティックコレクション」の一冊として、『本多猪四郎全仕事』といふ本があります。まさしくファン必見の書。
やはり特撮映画中心ですが、普段語られない一般映画も紹介されてゐます。私は『獣人雪男』以外の特撮映画をすべて観てゐますが、逆に一般映画は『お嫁においで』以外全く観る機会がありません。日本映画専門チャンネルあたりで放送してくれないものでせうか。皆は興味ないのですかね。

本多猪四郎監督は、プログラムピクチャーの名手でもあります。決められた予算と時間の中で、一定水準の作品を撮る。職人。「雲の形が気にいらない」とか言つてスタッフや俳優をいつまでも待たせたり、気に入りのスタジオを独占して他の監督に迷惑をかけたりするのは、たとへ海外での評価が高くても、それはアマチュアだと私は考へてゐます。

本書には本多監督が生前に書いたエッセイなども収録されてゐます。その中で「特撮映画の楽しさ」と題した、『メカゴジラの逆襲』パンフレットに寄せた一文は短いながらも特撮映画に対する本多監督の考へが凝縮されてゐて貴重です。その中で「私はこれからもいろいろな特撮映画を作るつもりです」と書いてゐますが、この『メカゴジラの逆襲』が監督として最後の作品である事を知る我々としては、泣けてくるのであります。(この映画を「最後の怪獣映画」と称し、本多監督を称へる人は多い。)
本多猪四郎監督の映画には、根つからの悪人は登場しないとよく言はれます。夫人へのインタビューでは、本人もそれを意識してゐたことが分かります。私生活でも温厚な人物だつたやうです。

ただ眺めてゐるだけでも楽しい一冊であります。昔の映画のポスターは面白いですね。実際は愚作でも面白さうに見えます。夢を与へる時代と、夢のない現実を表現する時代の相違でせうか。

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