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逆命利君


新装版 逆命利君 (講談社文庫)新装版 逆命利君 (講談社文庫)



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逆命利君
佐高信【著】
講談社(講談社文庫)刊
2010(平成22)年7月発行


かつて「週刊サタカ」といはれるほど著書を出しまくつた佐高信氏。その分似たやうな話とか、主張のダブリなんかもあつたのですが...
私の好きなのは本書『逆命利君』や『良日本主義の政治家』みたいな評伝もの、『失言恐慌』のやうなビジネスノンフィクションであります。筆刀両断も良いのですけどね。
本屋のレヂで顔見知りのおねいちやんが「サタカ好きなんですか? 私のお兄ちやんも好きなんですよ!」と訊かれもしないのに情報提供したり。今でも読者は多いのですね。

逆命利君とは、「命に逆らいて君を利する、之を忠と謂う」を略した言葉であります。いはゆるイエスマンとは対極の概念ですな。これを地で行つたのが本書で語られる、住友商事の故・鈴木朗夫氏であります。
この鈴木氏は凡そ日本のサラリーマン像とかけ離れた傑物と申せませう。1987年、56歳の若さで世を去つてゐます。
この人は「入社に際して誓約書を拒否」し、自分は仕事を売つてゐるのであり、時間を売つてゐないとして連日会社に遅刻して出社。役員から「就業規則違反だ」と詰め寄られると、「就業規則には遅参したら遅参届を出せとあるので、ちやんと出してゐる。違反はしてゐない」と反論したと言ひます。
もちろんスーダラ社員ではありません。「住商に鈴木あり」とまでいはれた有能な商社マンで、いづれ住商のトップに立つだらうと目されてゐました。

上司に苦言を呈する。サラリーマンなら中中勇気が要ることでせう。実際「逆命利君」なぞと気取つたところで、それを受け止める上司がぼんくらでは虚しいものであります。
その点、鈴木朗夫氏には、のち社長となる伊藤正氏が存在したことが幸福でした。佐高氏によると、この両者はまつたくの正反対の性格・性癖・生活スタイルなのださうです。しかし伊藤氏は鈴木氏を認め、そのやんちやぶりにてこずりながらも信頼してゐたのです。並みの人なら認めるどころか排除されてゐたでせう。

元々住商にはかういふ個性的な人物を輩出する土壌があつたと著者は述べます。別の会社だつたならば鈴木氏は直ぐに辞めてゐただらうと。
即ちさまざまな条件が重なつて、鈴木朗夫といふ人物はその能力を開花できたと申せませう。有名な財界人の評伝も良いですが、歴史に埋もれてしまふであらう人物を発掘した佐高氏には感謝であります。

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機長からアナウンス


機長からアナウンス (新潮文庫)機長からアナウンス (新潮文庫)



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機長からアナウンス
内田幹樹【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2004(平成16)年8月発行


小旅行のお供に携帯した文庫本であります。下呂温泉。
飛行機の旅ならより気分が高揚したかもしれませんが、私は航空機は好んで乗りませんので。
もつとも下呂は近すぎて空路はございませんが。
国内旅行ではなるべく汽車を駆使します。陸続きの土地にわざわざ飛行機で飛ぶのはつまらないのであります。沖縄へ行つた時も、飛行時間を少しでも減らさうと、福岡まで汽車で行き、福岡空港から那覇まで飛んだものです。

元A社(と作中で表記される)パイロットの内田幹樹氏の第一エッセイ集です。A社とは全日空のやうです。なんて言はなくても皆知つてゐるのでせうね。
酒の席での話が面白いから本にせよ、と求められて書いたものであります。当方は航空業界の知識がないので、なるほど「へえ」と思ふ内幕話が満載です。
人気のYS-11は、パイロット仲間には不評なのですね。パワーが無いし、コクピットは暑すぎたり寒すぎたりで最悪であると内田氏は語ります。また、国産といはれてゐるが、部品はほとんど外国製なのだとか。

格安航空券に関する話などは「内部の人間」らしく、一般の乗客とは少し異なつた意見のやうです。航空機に於るサアビスとは何か、これは提供する側と享受する側との間で溝があるのではありますまいか。それは航空業界に限つたことではないでせうが。
ま、ここは余計なことは考へず、気楽に読めばいいのでせうね。

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天才 勝新太郎


天才 勝新太郎 (文春新書)天才 勝新太郎 (文春新書)



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天才 勝新太郎
春日太一【著】
文藝春秋(文春新書)刊
2010(平成22)年1月発行


現在、時代劇専門チャンネルで「座頭市」シリーズ全26作品を放映中なのです。
シリーズ後半の「勝プロ」製作作品の中には未ソフト化の作品もありますので、まことにありがたいのであります。
で、改めて感じるのは、「座頭市は面白い!」といふことですね。カツシンがいつまでも長谷川一夫ばりの白塗り二枚目にこだはつてゐたら、彼は映画界から消えてゐたのではないでせうか。

カツシンは旧来の映画がいかに退屈であつたかを人々に悟らせやうと、自ら映画製作にかかはるやうになります。脚本にがんじがらめになる演出を否定し、現場で演出プランが決まつていくので、勝監督にとつて脚本はあつてないやうなものでした。予定された驚きとかを嫌ひ、「偶然=完全」などと説いてゐました。
その独特かつ斬新な理論に、本書のタイトルにもありますが、人々は彼を「天才」と呼称したものであります。
凡才の私には、カツシンが天才であつたかどうかの判定など出来るわけもありません。

『天才 勝新太郎』は、若い研究者である春日太一氏による評伝であります。
市川雷蔵に追ひつかうとしてもがいてゐた若手時代、勝プロ時代、黒澤明監督作品での降板、最後の「座頭市」で死者を出してしまつたことなど、情熱的に語ります。カツシンに対する愛情といふか敬愛の念が感じられるのであります。力作と申せませう。
しかし彼の生涯を俯瞰して見ますと、常に不満状態で、満たされることの少ない映画人生といふ感じがします。カツシンの死後、奥方の中村玉緒さんが(世間ではカツシンは好き勝手なことをしてきたといふ声に対して)、あの人は本当に好きなことをやれたのでせうか、と語りました。本心でせう。

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蟹工船・党生活者


蟹工船・党生活者 (新潮文庫)蟹工船・党生活者 (新潮文庫)



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蟹工船・党生活者
小林多喜二【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1953(昭和28)年6月発行
2003(平成15)年6月改版


のつけから関係ない話ですが、昔「蟹工船」といふ歌がありました。
村田英雄さんが歌ふ勇壮で男くさい、いかにも村田さんらしい歌であります。
私の記憶では東芝ヴァージョンとコロムビアヴァージョンの二種類の録音があり、東芝盤はさびの部分「どつこい、どつこい」がとてもかつこいいのですが、コロムビア盤は何だか気の抜けたサイダアみたいに拍子抜けするのであります。
小学四年生の時、校内のど自慢みたいな催しがあり、私はこの「蟹工船」を披露しました。割と好評をもつて迎へられた記憶があります。
この時私は「蟹工船」とか「川崎舟」とかが何であるかを知つたのであります。

小説「蟹工船」は、迫力満点で迫る労働者の物語。はつきり言つて読みにくい。
読点の位置がをかしかつたり、分かりにくい比喩を多用したりで、読みながらつかへます。
しかし大いなる説得力をもつて我々の前に聳え立つのであります。これが書かれた時代を考へますと、作者は相当の危険を伴ひながらも、伝へずにはゐられないものを爆発させたやうな書きつぷりに見えます。
監督浅川にはまつたく腹が立つね。

併録の「党生活者」は、「蟹工船」に比べて随分垢抜けた感じで、読みやすくなつてゐます。
しかし内容は救ひがない。「蟹工船」ではストライキといふ選択がありましたが、ここではただひたすら潜入生活を強ひられ、個人としての生活はまつたく成立してゐません。まさに党生活。
「笠原」と「伊藤」といふ二人の女性の間で懊悩する「私」の心理状態も興味深い。
最後を見ると、どうやら後編が書かれる予定だつたやうです。しかし、周知のごとく作者は獄中にて虐殺され、それは実現しませんでした。
無念の青春の書と申せませう。

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相撲部屋のおかみさん


 
相撲部屋のおかみさん
北出清五郎【著】
講談社(講談社文庫)刊
1993(平成5)年1月発行


白鵬関の連勝は止まりましたが、63連勝は相撲史に残る記録となりました。
双葉山関がかつて69連勝でストップしたときは、未だ木の鶏になれないなあ、などとつぶやき、心乱れて3連敗したのであります。
それに比べて白鵬関は連敗することなく、再び連勝街道を走らんとしてゐます。なかなかのものである。
連勝を止めたのが万年大関候補の稀勢の里。いつもこんな相撲を取ればいいのに。
北出清五郎さんが健在ならば、さぞかし辛口のコメントを連発したことでせう(氏はアナウンサーながら、向正面解説をすることもあつた)。

『相撲部屋のおかみさん』は、その北出清五郎さんが親方のおかみさん12人にインタビューした読み物であります。相撲を熟知してゐる氏ならではの質問なので、おかみさんたちも本音をもらし、生生しい言葉も引き出してゐます。

出羽海(佐田の山)夫人:自分の息子のことを「この子はタオルも絞れないのですよ」と平気で言ひながら相撲部屋に預ける親が増えてゐると語ります。しつけが面倒だから相撲部屋に預けちやへ、とでも考へてゐるのでせうか。
時津風(豊山)夫人:部屋に洗濯機を入れるかどうかで悩む。洗濯番が嫌なら強くなれ、といふのが基本の相撲界ですが、時代の波には抗へないのでした。
春日野(栃ノ海)夫人:元宝塚スタアの夫人は、男世界と女世界の違ひだけで、相撲界と宝塚は同じやうな世界であると言ひます。
大鵬夫人:親方の脳梗塞からの復帰を献身的に支へました。今、世の中はラクな方向に向かつてゐると指摘します。
佐渡ヶ嶽(琴桜)夫人:珍しく稽古場にも座るおかみさん。普通の相撲部屋では親方が「女のゐる場所ぢやない」と禁ずることが多いさうですが、元琴桜はこだはらないとか。
高砂(富士錦)夫人:大関時代の小錦関は、負けて帰つてくると、部屋で電気を消して泣いてゐたさうです。こちらまで切なくなるエピソオドだ。
北の湖夫人:親方が理事長の頃、私も世論と一緒になり親方を批判してゐましたが、夫人の話を聞くと、少し反省しました。
大島(旭国)夫人:若いお相撲さんは負けて廃業する人は少ないとか。最後の場所を勝ち越して「相撲界で通用した俺はどこの世界でもイケルぜ」といふ自信をつけたいのではないかといふ分析です。それなら辞めるなよと言ひたいが。
東関(高見山)夫人:相撲取りの理想的な太り方について、改めて考へる。そもそもハワイ勢は太りやすいのでせうか。
武蔵川(三重ノ海)夫人:武蔵丸は母親に「マル」と呼ばれてゐました。それで武蔵丸となつたと思はれてゐますが、これは偶然ださうです。四股名を付けた後に「マル」と呼ばれてゐたことが分かつたのです。それにしても武蔵丸関はとことん良い奴だなあ。
九重(千代の富士)夫人:結婚して弱くなつたら、おかみさんの責任と呼ばれるのが通例であります。横綱千代の富士は、夫人がさう言はれてはいけないと思ひ、死に物狂ひで努力した。優しい親方とおかみさんです。
ニ子山(若乃花)夫人:力士の収入が歩合制だつた頃の苦労を語ります。弱小部屋だつた時代は、地方巡業の金策もままならず、質屋へ入れたり出したりでやりくりしたさうです。月給制に変つた時は本当に安心したことでせう。

つくづく相撲部屋のおかみさんといふのは精神的肉体的に疲弊するものだと思ひます。男社会の伝統の中で、愚痴ることもなく淡々と部屋を切り盛りする姿は、文字通り縁の下のなにがしであります。北出清五郎さんの話の引き出し方もうまい。好著。

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私鉄史探訪60年


私鉄史探訪60年 (マイロネBOOKS)私鉄史探訪60年 (マイロネBOOKS)



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私鉄史探訪60年
和久田康雄【著】
JTB(マイロネBOOKS)刊
2002(平成14)年2月発行


日本の鉄道は、国鉄を中心に全国にその路線網を充実させてきました。長距離輸送は国鉄、地方鉄道は私鉄と何となく役割分担が続いてきたのであります。
わが地元である東海地区でも、国鉄東海道線と名鉄本線が並行してゐますが、国鉄はあくまでも日本の大動脈の一部といふ位置付けなので、きめの細かいダイヤは組まれず、地域交通の主役は名鉄に譲る感じでした。

ところが国鉄が分割・民営化でやうやく地元の乗客にも目を向けるやうになり、本格的に私鉄との競合・競争関係に入つていくのでした。
元々体力のある旧国鉄のJRグループは、各地域に合はせた施策を次々に打ち出し、競合私鉄を蹴散らしていきます。名鉄もかなりシェアを奪はれました。
特に私鉄王国といはれた関西では、その凋落振りがはなはだしい。私鉄ファンとしては、一層肩入れをしたくなるのであります。

著者の和久田康雄氏は、その生涯を私鉄研究にささげてきました。かつて岩波新書から『日本の私鉄』なんて本も出してゐます。
タイトルから、日本の私鉄史概観が述べられるのかと思ふところですが、あくまでも和久田氏個人の視点を中心に語られてゐます。帯の惹句に「私鉄史の第一人者といわれる著者の「私鉄」への愛の告白」とありますが、まことに適切な一文と申せませう。「愛の告白」ですよ。

「別にもとの国鉄が嫌いだったわけではないが、私鉄の方が各社ごとの個性に富み、画一的な国鉄には見られない魅力にあふれていた。(中略)
 今ではJRも発足してから十数年たって、各社が独自の行き方を見せてきている。しかし、限られたお金と時間で半世紀余り趣味活動をしてきた私としては、私鉄のことだけで昔も今も手いっぱいというのが正直なところである」(「はしがき」より)

「私鉄のことだけで手いっぱい」といふ表現はとてもよく分かるのであります。飽きることがないし、知るほどに奥深さも増します。ずぶずぶ。
では本書は一メイニアの自己満足本なのかといふと、さうではありません。
3章構成でそれぞれ「私鉄史のスポット」「ターミナルの移り変わり」「思い出の名車」が語られるのですが、話題は偏らず全国バランスよくカバーしてゐます。そのまま私鉄入門書となりませう。
まあ強いて欲をいふなら、記述が大手私鉄に限られてゐることで、中小私鉄についても少しくらゐふれてもバチは当たりますまい。ま、それは承知の上なのでせうがね。
では、おやすみなさい。

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CoCo壱番屋 答えはすべてお客様の声にあり


CoCo壱番屋 答えはすべてお客様の声にあり (日経ビジネス人文庫)CoCo壱番屋 答えはすべてお客様の声にあり (日経ビジネス人文庫)



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CoCo壱番屋 答えはすべてお客様の声にあり
宗次徳二【著】
日本経済新聞出版社(日経ビジネス人文庫)刊
2010(平成22)年10月発行


ココイチ。私は好きなんですよ。愛知県人なので、店舗数が多くて嬉しい。
ほぼ1日置きに通つてゐた時期もありました。全国にあるので、旅行先でも努めてココイチを利用しました。「旅に出てまで、チェーン店かよ、ケッ」と嘲笑されてゐましたが。
全国のココイチ制覇を目指す人のサイトを見つけて、私も真似を始めましたが、さすがにそれは頓挫してゐます。独身時代にもつと行つておけば良かつた。

さて本書は新刊ですが、内容は15年前の『繁盛させたければお客様の声を聞け!』(旭屋出版)の加筆再出版といふことです。しかし内容は古くなくて、飲食店・小売店全般に共通の「繁盛のヒント」が開陳されてゐます。
現在は第一線を退いた創業者・宗次徳二氏は、成功の秘訣を、何もなかつたからうまくいつたと述べてゐます。
確かにチェーンストア理論などを学んだ人だつたら、考へつかない思想を展開してゐますね。
喫茶店時代の有料ピーナツ、店は最初から繁盛しない方がいい、二流以下の立地への出店...

アンケート葉書をすべて目に通してゐたといふ宗次氏。店のアンケート回収箱に入れるのではないから客は投稿しやすい。悪い意見を店で握りつぶされる心配もないので、経費はかかるけれど顧客の信用のためには良い方法ですね。今では同様の方式を採るチェーン店も多い。
やはり苦情の葉書が一番参考になると著者は言ひます。読んでゐる最中は辛いでせうが。制度上の不満なら改善しやすいけれど、接客上の苦情はその店員本人が納得してゐないと改善が難しいところがあります。多店舗展開するチェーン店では、ごく普通の人たちをそれなりのレベルにしなくてはいけません。と言つてそれを仕組みでの解決を図ると、心がこもつてゐないと指摘されたり...

現在は代替わりして経営陣が刷新されてゐるさうですが、今後も奢ることなく「お客様の声」を元に繁盛店を作つてほしいものであります。私は以前のやうには頻繁に行けなくなりましたが。←自分勝手な客だなあ。

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死刑はこうして執行される


死刑はこうして執行される (講談社文庫)死刑はこうして執行される (講談社文庫)



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死刑はこうして執行される
村野薫【著】
講談社(講談社文庫)刊
2006(平成18)年1月発行


日本の死刑制度について簡潔に教へてくれます。
普通なら一般人が見聞できないことでありますので、これは必見であります。

四部構成で、第一章が「ニッポンの死刑」と題されてゐます。本書全体の概要なのですが、なぜ「日本」ではなく「ニッポン」なのか。
私の見るところ、カタカナで「ニッポン」と書く場合、その対象を揶揄したりおちよくつたりする時が考へられます。著者としては、先進国の中で、未だに死刑制度を継続してゐる日本といふ国をちよつと突き放した感じで見てゐるのではないでせうか。

第二章は「「被告」が「死刑囚」になるとき」。死刑判決が地方によつて偏りがあつたり、その時の世論のに流されたり、まあ恣意的であると言つてゐます。
第三章「獄中の日々」では、まさに関係者以外は知り得ない死刑囚の生活ぶりがルポされてゐます。
第四章ではいよいよ「死刑執行」で、執行までの手続きや執行そのものの解説、死体の後始末(!)となかなか辛い内容です。いかに極悪犯人でも、死刑はやはり殺人に変りはないので、執行人とはやるせない仕事であることだなあ。ちなみに「絞首刑」とよく言はれますが、正確には「縊死」ださうです。即ち首吊り自殺の手伝いをすると申せませうか。

ここまでの書きつぷりで分かるやうに、著者は死刑廃止論者ですね。いかなる立場であれ、事実を元に語るならばそれは参考になり教へられるものです。その意味では本書は「読んだ方が良い本」だと思ひます。
気になるのは、制度が形骸化してゐる部分と制度自体に不備がある部分の指摘が「なひ交ぜ」になつてしまひ、更に「先進国では数少ない」とか「冤罪の可能性」の話とかが出てきて、本質からずれた論議にならないか、といふ点であります。(それはそれで大事な要素ですが)。

ま、読む人にとつては余計なお世話ですかな。

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さすらい


さすらい (新潮文庫)さすらい (新潮文庫)



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さすらい
小林旭【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2004(平成16)年11月発行


11月3日は文化の日―ではありますが、同時にマイトガイ小林旭の(たしか)72回目の誕生日であります。
この人は「小林氏」とか「旭さん」とかいふ呼称は似合ひません。だからここでは敬称なしの「アキラ」と呼びませう。ヒーローは呼び捨てが相応しい。

『さすらい』はアキラが初めて自分を語つた本。自分のアクションの原点は「ターザン」ではないかと述べてゐますが、さういへばこの人、乱闘シーンでは必ず階段だのテーブルだの一段高い所に意味も無く上り、そして飛び降りる動作を繰り返してゐました。「あの行動は、何の意味があるの?」などと訊ねてはいけません。それがマイトガイだから。
最初は日活ではなく東映のニューフェースに応募したのださうです。しかもその時、最終審査に残つたのが高倉健さんだといふから、偶然といふのはすごい。結局健さんが採用されてアキラは落選しました。しかし後の歴史を見れば、これで良かつたのでせう。

大部屋時代の屈辱も淡々と述べます。普通なら潰されてしまふところを、この人はナニクソ精神で見返すのであります。あるいは、追ひ込まれてから真価を発揮する人物と申せませう。
ここで「やつぱり!」と思つたことがあります。『勝利者』といふ石原裕次郎の映画(本当の主演は三橋達也だと思ひますが)を初めて観た時、北原三枝が踊る舞台の観客席で、裕次郎の隣の席で拍手してゐる人物がアキラに見えたのです。何しろわづか数秒のシーンなので、その時は確認するすべがありませんでした。
ところが、本書でそのシーンについても触れてゐまして、やはりアキラ本人の出演だつたことが分かりました。顛末が笑へます。

他にも、唯一のライバルと目してゐたのが裕次郎ではなく赤木圭一郎であつたとか、美空ひばりとの結婚・離婚には山口組組長(当時)の田岡一雄氏が絡んでゐたとか、ハリウッドにスカウトされて米国で活動するつもりだつたとか、本音で語つてくれます。いやあ、映画だけではなく、アキラ本人も実にユニイクな人物ですな。まだまだ語つてほしいのであります。
アキラのファンでなくても(たぶん)面白い、痛快な本と申せませう。

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