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文章読本


文章読本 (中公文庫)文章読本 (中公文庫)



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文章読本
丸谷才一【著】
中央公論社(中公文庫)刊
1980(昭和55)年8月発行
1995(平成7)年11月改版


文化勲章を受けることになつた丸谷才一さん。
わたくしも若い頃は、勲章なんてまことにくだらぬものよと考へてゐましたが、いざ丸谷氏が受章しますと「別にいいぢやん」とつぶやく自分がゐます。
インタビューを受ける丸谷才一さんは、相変らずの大きな声で元気よく語つてゐました。歴史的仮名遣ひで書くと本が売れないつていふんだよ、なんて。

故井上ひさしさんに「掛け値なしの傑作」と言はしめた丸谷版『文章読本』であります。
これは名人芸の域で、読んでゐるうちにその内容にうつとりし、上手な文章を書きたいなんで心持はどこかへ行つてしまふほどです。
第二章の「名文を読め」と第三章の「ちよつと気取つて書け」(カッコイイ)で、おほむね文章作法の要諦が示されてゐるのではないでせうか。他の章は実に贅沢な文章論と申せませう。

ところで、いはゆる名文とは何か。本書では以下のごとく説明されてゐます。
「有名なのが名文か。さうではない。君が読んで感心すればそれが名文である。たとへどのやうに世評が高く、文学史で褒められてゐようと、教科書に載つてゐようと、君が詰らぬと思つたものは駄文にすぎない。逆に、誰ひとり褒めない文章、世間から忘れられてひつそり埋れてゐる文章でも、さらにまた、いま配達されたばかりの新聞の論説でも、君が敬服し陶酔すれば、それはたちまち名文となる。君自身の名文となる」
それには広範囲に渡る多読が条件となる旨を付け加へてゐます。
本書の刊行後、この部分を吉行淳之介さんに対談で突つ込まれてゐました。くだらぬ文章を名文と思ふ危険性に言及したと記憶してゐます。丸谷氏は押され気味でしたが、そのやりとりは面白かつた。

しかし少なくともわたくしにとつて、本書は「敬服し陶酔する」に十分な一冊と申せませう。

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震災と鉄道


震災と鉄道 (朝日新書)震災と鉄道 (朝日新書)



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震災と鉄道
原武史【著】
朝日新聞出版(朝日新書)刊
2011(平成23)年10月発行


本書の元になつたのは、ウェブマガジン上のインタビュー記事ださうです。しがたつて語り口調なので読みやすいのですが、内容はこの上なく重いのであります。
原武史さんは鉄道関係の著作がいくつかありますが、本職は政治思想史。専門外の気楽さからか、過去の鉄道関連著作には良い意味で「軽み」があります。
ところが本書『震災と鉄道』は違ひます。

一読しますと、原武史さんの怒りや焦り、どうしやうもない悲しみが伝はつてくるのであります。何だかやるせない感じと申しますか。
主にJR東日本に対する苦言が目立ちます。地元民鉄(例へば三陸鉄道)が復興へ向けて明確な目標と、それに必要な支援を要請してゐるのに対し、JR東は東北新幹線を早々と復旧した事で満足して、依然運休中のローカル線をどう復興させるのか、全く明らかにしません。まさか足手まとひのローカル線がこれで廃線に出来る、などと考へてはゐないでせうが。

また、こんな非常時にもリニア新幹線の建設計画を変更することなく邁進するJR東海にも言及します。
リニアの駅ひとつ作るのに地上駅なら350億円、地下駅なら2200億円かかるとされてゐます。一方JR東は、被災したローカル線をすべて元通りにするのに1000億強と表明してゐます。すると地下駅1駅の分で被災ローカル線は助かるといふ計算になりますが、お金をこちらへ回さうといふ話にはならないのであります。突き進め!リニアだ!といふ感じですかな。

私見では、東北新幹線を最優先に復旧させたりリニアの建設をすすめたりするのは、「復興」「躍進」が実に分かりやすい形で人民に伝はる、象徴的な意味合ひがあるのではないかと思ひます。
唐突な話ですが、これはウルトラセブンに登場した「ガッツ星人」を想起させます。
地球征服を狙ふガッツ星人は、セブンが普段モロボシダンといふ地球人に化けてゐることを突き止め、「ならばダンを殺せばいいではないか」といふ意見が出ます。しかし結論は「いや、セブンでなければ駄目だ」。
その理由を佐原健二のタケナカ参謀が述べます。「我々の心のより所であるセブンをその眼前で抹殺することによつて、地球人は容易に屈服を認めてしまふだらう」
JRの方針とガッツ星人の戦略は似てゐるやうに思ふのですが、違ひますかな。

原武史さんは言ふだけではなく、自分で出来る支援として、三陸鉄道の切符を60万円分購入したさうです。そして人に会ふたびにこれを渡し、支援の必要性を訴へたといふことです。
お金は、有る所には有るのです。それが効果的に使はれず、支援を待つ場所へは届かないのがもどかしい。そんな状況なのです。

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8月17日、ソ連軍上陸す


8月17日、ソ連軍上陸す―最果ての要衝・占守島攻防記 (新潮文庫)8月17日、ソ連軍上陸す―最果ての要衝・占守島攻防記 (新潮文庫)



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8月17日ソ連軍上陸す 最果ての要衝・占守島攻防記
大野芳【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2010(平成22)年7月発行


いはゆる「占守島の戦ひ」を描くノンフィクションであります。副題に「最果ての要衝・占守島攻防記」とありますが、光人社的な戦記物とはちと違ふやうです。

1945(昭和20)年8月14日にポツダム宣言を受諾した日本。翌日の玉音放送で多くの国民が終戦を知るところとなります。
ところが日本の最北端に近い千島列島の占守島では、終戦後の8月17日から三日間に渡つて戦闘が繰り広げられたのでした。ソ連軍のまさかの急襲が! この国は昔も今も油断がならない。

著者の大野芳氏は29年の歳月を費やし本書を完成させました。労作と申せませう。
おほむね時系列にこの戦ひが述べられ、停戦の軍使として関つた長島厚氏の講演が、適宜挿入されます。第七章「軍使は二人いたのか」では、長島証言によつて通説が覆る部分について語ります。聞き書き証言を中心にしたノンフィクションでは常につきまとふ危険性も感じるのであります。
人は大袈裟に語りたがる、或いは面白い話を脚色したがるものです。また、自分に都合の悪い事は無意識にせよ意識的にせよ隠す傾向があります。これはわたくしも同様なので、証言者を一概に責める気にはなれませんが。

そして「エピローグ」を読むと、北方領土問題の理不尽さを改めて感じます。多くの人に読んでもらひたい一冊と申せませう。
ただ、せつかくの力作に対してかかることを述べるのは申し訳ありませんが、大層読みにくい。文章といふより、構成の問題なのでせうか。読みながら何度も前の部分を読み返したり、突つかへるのでした。
単にわたくしの読解力不足なのか? と少し不安になりました。
以上。
 
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恋と革命


 

恋と革命 評伝・太宰治
堤重久【著】
講談社(講談社現代新書)刊
1973(昭和48)年8月発行


著者は太宰治の弟子・友人としてその晩年を見届けました。弟は東宝俳優の堤康久さんで、特撮映画で活躍した人。なるほどさすが兄弟だけあつて、顔もよく似てゐます。

太宰治といふ作家はまことに不思議な存在であります。
資産家に生まれながら実父、次いで長兄に反抗する。成績優秀なのに放蕩を繰り返し、実家から仕送りを受ける身でありながら期待を裏切る。
普通なら世間知らずの甘つたれとして黙殺されるのが関の山でせう。しかしその作品は没後60年を超えてなほ愛読されてゐます。

堤重久さんは、太宰が生母から冷たい扱ひを受けてゐたことを重要視しました。母の愛情に飢ゑてゐたからこそ、その代替を叔母や子守に求め、彼女らも受け入れたと。そして道化(おどけ)の性向も、大家族の中でオズカスと呼ばれる目立たない自分が、何とか母親に注目されたいといふ、愛の渇きからきてゐるのだと。
他の人に言はれると、「まるで見て来たやうに言ひやがつて」と鼻白むのですが、堤重久さんの場合は「ははあ、さういふものですか」と納得するしかありません。

さらに、太宰と言へば自己憐憫とか弱さとかが強調されますが、それは太宰の作り出したポーズであるのださうです。精神的な強さ・男つぽさを併せ持つのですが、さういふ面は隠すのであります。さういへば「如是我聞」で、強いことは恥ぢるべきもので、もつと弱くなれと書いてゐた気がします。うろ覚えですが。
人間は恋と革命のために生れてきたのだ、と『斜陽』の人物に言はせ、その生き方を実践してきた太宰。
やはり強靭な精神力と意志を持つた男だつたのだな、といふ読後感が残るのであります。
力作。しかし絶版。残念。

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