FC2ブログ

マタンゴ

81HilkaoWzL__SY445_.jpg

#00197「マタンゴ」
久保明も、いづれキノコになるのか?


製作国:日本
製作会社:東宝
監督:本多猪四郎
出演:久保明/水野久美/土屋嘉男/佐原健二/八代美紀
公開:1963年8月11日


 7人の若い男女が、ヨットで遭難し、不気味な無人島に漂着します。そこで難破船を発見しますが、船員たちの死体などはなく、謎は深まるばかり。なぜかキノコはふんだんにありますが、難破船の航海日誌によると、食べてはいけないらしい。
 7人の心は次第に離れていきます。東京ではそれぞれ自分本位の思惑があつたため、表面上仲良くしてゐましたが、ここでは自我丸出しです。

 土屋嘉男は始めから非協力的、太刀川寛はライフルを片手にやりたい放題で水野久美とどこかへ消える、佐原健二はその太刀川に殺される(後から考へれば、最後まで人間らしくふるまつた佐原が、一番幸せだつたかも知れません)、最も責任感が強いと思はれた小泉博は食糧を独り占めして逃げ出す(これは衝撃的だつた。この後観客は置いてけぼりを喰はされた感があります)、残された久保明八代美紀も限界寸前であります。

 皆は禁断のキノコ「マタンゴ」を食べ、自らもマタンゴ化しつつあつたのです。
 八代は恩師の久保がせつかくかき集めてきた食糧を前に「たつたこれだけ?」なんて、普段見せない本性を見せてしまひます。  更に八代美紀もついにキノコを口にします。その時、陶酔の表情で「せんせ~い」と呼ぶ姿は、これまたショッキング。

 そしてラストシーンは戦慄であります。たつた一人奇跡的に日本へ帰つてきた久保明が、病棟(檻?)の中で背を向けて体験を語つてゐるのですが、僕はバカだつた、僕も皆と一緒にキノコを食べれば良かつたと叫ぶや否やこちらを振り向く、その彼の顔は!

 今回の遭難の責任者は、まづ小泉博ですね。天候が怪しくなつた時点で雇ひ主の土屋嘉男から「君が自信がなければ引き返すんだな」と言はれてゐるのに、変な自尊心でもあつたのか、素人の土屋嘉男の意思を確かめてゐます。
 プロの自分が危険だと分つてゐながら引き返さぬのは、船長失格と申せませう。

 それから久保明。この人は八代美紀の人生を台無しにしましたね。元々この仲間のキャラクタアに合はぬ女性と知りながら、強引にヨットに乗ることを勧めたやうです。

 怪人マタンゴ役は天本英世さん。顔が分からぬ役をよく引き受けたものです。少し前なら、土屋嘉男さんの役どころですね。あの気味の悪い「ふおふおふお......」といふ声、のちの「ウルトラマン」にて、バルタン星人の声に流用されたのは有名な話。
 なほ、音楽担当の別宮貞雄は、元上智大教授で翻訳家(欠陥翻訳時評の人)の別宮貞徳の兄であります。

 とまれ、人間のエゴを描くにはこれ以上ないシチュエーションを設定し、同時にキノコ嫌ひの子供を全国に増殖させた、カルト映画の絶品と申せませう。


スポンサーサイト



コメント


管理者のみに表示

トラックバック