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サキ短編集


サキ短編集 (新潮文庫)サキ短編集 (新潮文庫)


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サキ短編集
サキ【著】
中村能三【訳】
新潮社(新潮文庫)刊
1958(昭和33)年2月発行


これは面白い短編集であります。
どのやうに面白いかといふと、実にいやらしく、皮肉めいて、素直ではなく、とぼけてゐて、常に話者が冷笑を浮かべて語つてゐるやうな面白さです。

サキといふ人は、19世紀の終盤から20世紀始めにかけて活躍したイギリスの短編小説家であります。
翻訳者中村能三氏が文庫版あとがき(1958年の文章)で、英米では大層親しまれてゐるこの作家が、日本ではほとんど紹介されてゐないのは不思議であると語つてゐます。
このつぶやきから半世紀が経ち、私の記憶するところではこの新潮文庫版以外にも、岩波文庫や講談社文庫・ちくま文庫などでその作品が紹介されてゐます。
それならサキはブレイクしたのかといふと、さうでもなささうです。なぜでせうね。こんなに面白いのに。
たぶんサキの愛読者は、サキがメジャーになることを望んでゐないでせう。「自分だけの存在」にしてをきたいのかも。私もさうですから。もつと皆に魅力を知つてもらひたい、しかし有名になつて欲しくない。ああ。

短編21編が収録されてゐます。もはやコントと呼ぶ方が適してゐる作品もありますね。
それぞれに最後にオチがあるので、内容の紹介はできないけれど、私の好みは「二十日鼠」(これを冒頭にもつてきたのは正解。私は笑ひ転げた)「肥った牡牛」「運命」「開いた窓」「宵闇」「十三人目」「家庭」「七つのクリイム壷」など。しかしそれ以外も好い。ようするに全て好いのであります。

翻訳の中村能三氏は名訳者といはれた人。田中小実昌さんは敬意を込めて「ノウゾーさん」と呼んでゐました。
...といふ偉い人をつかまへて書くのは気が引けますが、少し読みにくい訳文です。読点の位置がをかしい文が多いと思ひました。
また「マアチン・ストウナア」とか「ハイド・パアク・コオナア」とか、この人は長音記号を知らぬのかと疑義をはさむくらゐ独特の表記をしますね。好きだけど。
まあ、あらゆる意味で楽しめる一冊と申せませう。

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