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人間万事塞翁が丙午


人間万事塞翁が丙午 (新潮文庫)人間万事塞翁が丙午 (新潮文庫)



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人間万事塞翁が丙午
青島幸男【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1984(昭和59)年8月発行


青島幸男さんは才能の塊のやうな人でした。
放送作家出身なのですが、それに飽き足らず様様な、華華しい活動を見せてくれました。
私の年代ですと、俳優として意地悪ばあさんを演じてゐた頃が印象に残つてゐます。それから、これは自分たちより上の世代がリアルタイムで接してゐると思ひますが、クレージーキャッツに提供した作詞の傑作群。私はクレージーが大好きでして。
政界進出後も、二院クラブ時代は勢ひがありました。ま、都知事としてはごらんの通りでしたがね。

そして小説家としての活躍。青島幸男の歴史の中では、小説を書き始めたのは遅い方でせう。
『人間万事塞翁が丙午』は直木賞を受賞するのですが、何と本作が処女作だつたのです。驚きですね。
主人公「ハナ」は青島さんの実母がモデルださうです。ハナ肇とは関係ないやうです。

昭和12年、支那事変の年に、ハナの夫・次郎に召集令状が来るところから話が始まります。
ハナの家は東京下町で繁盛してゐる弁当屋さん「弁菊」。ここを舞台に、うるさくて人情に厚く、口は悪いが素直で飾らない人たちが入り乱れて、この小説を盛り上げます。
義父・義母との確執、夫の俺様ぶり、二人の息子の将来などハナはいつも悩まされながら、何とか戦中・戦後を嫁として、妻として、母として乗りきり、たくましさを増していくのでした。
そんなに苦労してきたのに、嬉しい孫も出来たのに、それなのに、ああ...

書き方によつては、まことに暗い小説となりかねない内容なのですが、深刻さは感じさせずカラッとしてゐます。
何よりも文章のリヅムが良い。畳み掛けるやうな会話のテムポも心地良いのであります。テレビで仕事をしてきた青島さんならではの小説と申せませう。
残念ながら絶版ださうで。しかし入手は比較的簡単であります。
では。

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