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ぼくは本屋のおやじさん


ぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)ぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)



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ぼくは本屋のおやじさん
早川義夫【著】
晶文社刊
1982(昭和57)年5月発行


晶文社の「就職しないで生きるには」といふシリーズの1冊。しかしラインナップを見ると、皆ちやんとした仕事をしてゐます。立派な就職と申せませう。「会社員にならずに生きるには」といふ意味合いでせうね。

著者の早川義夫さんは、ミュージシャンとして知る人ぞ知る存在です。
その早川さんが「早川書店」といふ本屋を開業し、書店主としての苦悩を語ります。
いや、別段彼は苦悩を語るつもりではなかつたのでせうが、結果的に「ああ、本屋の主とはなんて何て辛い商売なのだらう」と読者に思はせます。

問合せの多い本が入荷しない。しかし大書店には山積みになつて陳列されてゐる。
ならば注文を出す。しかし入らない。忘れた頃に「品切れ」の判子が押された注文書が戻つてくる。
お客さんからは文句を言はれる。信用をなくす...

ここで人はつぶやくかも知れません。「それは、本書の舞台となつてゐる30年前の世界ではないのか? さすがに今はそんなことはないでせう?」
私の考へでは、その意見は半分正しく、半分は正しくない。
なぜなら、「早川書店」のやうな本屋は、もうすでに絶滅の危機に瀕してゐるからです。
現在、本屋として正常に機能してゐるのは、早川義夫さんのいふ「大書店」と、チェーン展開をしてゐる会社でせう(チェーン店ですら、書店専業は難しく、レンタル屋などを併設して集客に努めてゐます)。
即ち、中小書店を取り巻く諸問題は解決したのではなく、中小書店そのものが淘汰されてしまひ、商品(本)の調達が可能な本屋だけが生き残つたといふ訳です。たぶん早川さんのいふ「ネクタイをしてこなくちゃ駄目」な本屋でせう。

冷静に考へるならば、一般客の望む結果とも申せませう。本書にも「一年に一冊売れるか売れないかの本を、一年間棚に差しておくよりも、たとえば『平凡』、『明星』をうず高く積んだ方が、何倍ものお客さんにサービスしているわけで......」といふ記述があります。例へに使ふ雑誌に時代を感じますが(その後早川さんは書店をやめ、音楽活動を再開してゐます)。

そんなわけで本書は、昭和戦後の、ごく一般的な中小書店の記録として伝へたい一冊であります。
今でも容易に入手可能でございます。

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