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日本語の作文技術


日本語の作文技術 (朝日文庫)日本語の作文技術 (朝日文庫)



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日本語の作文技術
本多勝一【著】
朝日新聞社(朝日文庫)刊
1982(昭和57)年1月発行


著者本人の言によると、本書は本多勝一氏の著書中、一番部数が出てゐる作品ださうです。
もつとも各講座やセミナアなどのテクストとして駆使されてゐるケースも多いので、純粋な読者はどれだけゐるか分かりません。本書に関しては、「副読本として読まされたが、内容に反感を抱いた」といつたやうな感想も多いからです。つまり本多氏とは思想的立場を異にする人々なので、さういふ意見が出るのは当然と申せませう。

しかし虚心に文章作法の手引きとして読むと、これほど分かりやすく役に立つ書物はさうありません。例へば名著の誉れ高い丸谷才一氏『文章読本』は、その作品自体は読者を酔はせる絶品でありますが、読者が実際の効果を得るには、かなりの努力が必要になる。何しろ「名文を読め」といふのが要諦で、あとはことごとく枝葉末節に過ぎない、迂遠な話だらうが何だらうが、秘訣はそれしかないと丸谷氏は諭すのであります。
ところが『日本語の作文技術』では、文字通り作文の技術(ビジネス書ふうに言へば「スキル」)を伝授します。それは、明日からでも早速使へるものであります。

本書は構成にも気が配られてゐます。多田道太郎氏の文章を引用しますと、
「小声で言っておくと、ごく忙しい目にあっている人は、全巻を通読しなくてもいい。第一章から第四章まで読めば、それだけで確実に、文章はよくなる。この本はそういうスゴイ本なのだ。」
即ち優先順位の高い順に頭から並んでゐるのであります。その伝でいくと、分かりやすい文章を書く鍵は、修飾する言葉とされる言葉の関係を明らかにすることらしい。つまり語順ですね。一例として、
「私は小林が中村が鈴木が死んだ現場にいたと証言したのかと思った。」
といふ悪文の典型のやうな例文を提示します。この文章は根本からをかしいけれど、まづ修飾と非修飾の関係をはつきりさせるだけで、かなり改善されます。即ち、
「鈴木が死んだ現場に中村がいたと小林が証言したのかと私は思った。」

次の章では句読点を論じます。正しくテンとマルを駆使できてゐない文章が多いからです。正しい位置にテンがないと、分かりにくいだけではなく、場合によつては真逆の意味になることがある。これも様様な文例を示して解説します。以上で第四章までが終りです。
つまり、修飾の関係と句読点で、相当の技術が使はれてゐるといふのであります。これを読んで以降、私もテンを使ふ時は、本当にそれが必要なのかどうか考へるやうになりました。それにしてはヘボい文章ですが。

巻末付録の「メモから原稿まで」は、取材メモの取り方やまとめ方、さらに原稿の書き方が説明されてゐます。第一線で活躍し続けた著者の舞台裏を披露してゐて、まことに参考になります。現在は原稿用紙ではなくPCに向かふのが一般的かもしれませんが、考へ方は敷衍することが出来ませう。
喰はず嫌ひをせずに、読んでみては如何ですかな。

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