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戦後性風俗大系 わが女神たち


戦後性風俗大系―わが女神たち (小学館文庫)戦後性風俗大系―わが女神たち (小学館文庫)



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戦後性風俗大系 わが女神たち
広岡敬一【著】
小学館(小学館文庫)刊
2007(平成19)年3月発行


広岡敬一さんは、風俗記者として戦後の性風俗と接し続けた人であります。この世界には、内側の人間と外側の人間の区別が厳然としてゐたさうですが、広岡さんは早くから「内側」の人物として認められ、一般人が知り得ぬ情報を得てゐたといふことです。何よりも彼は、風俗女性たちを蔑まなかつた。それどころか畏敬の念を抱いてゐたやうです。
「私は、そんな女性たちに寄生して食っていた」(「はじめに」より)
等身大の人間として扱はれた女性たちは、広岡さんに心を許して全てを語つたのでせう。

今はアイドルなみに人気のあるAV女優もゐる時代ですが、当時の彼女たちは完全に日陰の存在。一人ひとりが明日も分からぬ自分の境遇に慄きながらも、我儘勝手な男どもを喜ばせてゐたのであります。広岡さんが彼女たちを「わが女神たち」と呼ぶのも頷けるではありませんか。
しかし、時代が移るにつれて、女神たちの意識も変つてきたと広岡さんは言ひます。家族の生活苦を救うために、わが身を犠牲にするなどといふのはもはや昔話ですね。
時代や世相が性産業も変へてゆく。性風俗史は、戦後史のサイドストーリーと言へませう。

その象徴的な話。『「小町園」のメアリー』によると、1945(昭和20)年、敗戦後わづか10日後に、RAAなる団体が「駐屯軍慰安の大事業に参加する新日本女性求む」と募集広告を出したのですが、これが実は進駐軍専用の娼婦を求めてゐたのであります。RAAとは「特殊慰安婦設備協会」の略で、当時の内務省の政策によるもの。つまり、戦後性風俗史は、国策から始まつたのであります。
各章の頭には、貴重な年表が付されてゐます。通史として概観でき、まことに親切であります。

残念ながら、広岡さんは2004年に亡くなられたさうです。しかし本書を書いたことで、実に大きな足跡を残したと私は勘考するものであります。本書を手に取るきつかけは助平根性だとしても、一読すれば「これは只者ではない」と分かるでせう。敢へて言ふ。万人必読の、感動のノンフィクションであります。

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