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自動車絶望工場 ある季節工の日記


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自動車絶望工場 ある季節工の日記
鎌田慧【著】
講談社(講談社文庫)刊
1983(昭和53)年9月発行


明日の見えない労働とはまさにこのことでありませうか。例へば「今、この時期を乗り越えれば楽になる」とか、「将来楽に仕事ができるために、現在一時的に仕事がキツイ」といふのは未来があります。さういふ仕事なら希望が持てるでせう。
しかし、鎌田慧さんが季節工として潜入したトヨタ自動車におけるベルトコンベアの作業は、全く人間性を無視したものでありました。(現在、トヨタでは「季節工」はゐない。)
生産第一の思想から、現場の実態は見て見ぬふりをされ、ただでさへ人員不足なのに増産を迫られます。ベルトのスピードは上がる一方であります。当然危険度は増し、事実重大な事故も続発しました。死者さへ出てゐます。鎌田さんによると、さういふ事故は何故か公表されない(記事にならない)のださうです。

ここでは人間が機械の一部になり、思考よりも身体が無条件に機械に合せて動くやうになることが要求されます。私はトヨタ本体の工場見学は、小学生時代のイベントを除いて経験がありませんが、下請け孫請けの工場でいくつかベルトコンベアを見ました。たまに日本語を教へたりする中国人女性たちに、就職の手伝ひをすることがあります。言葉がまだ不十分なので、不利な条件で契約しないやうについて行くのですが、その時工場見学をさせてくれます。手馴れた工員たちの見事な動き。鮮やかな手つきを見て、彼女たちは「これなら出来さう」と思ふのですが、いざ試しに自分がやつてみると、あまりのハードさに、無理です、と悲鳴をあげるのです。まさに見てゐるのと、実際に自分がやるのとでは大違ひ。工場の班長や課長は「大丈夫大丈夫、すぐに慣れるよ」と甘いことを言ふのですが。
中には、お金のために頑張つてみます、と入社する女性もゐます。慣れるまでは大変だし、残業も2-3時間は当り前(リーマンショックの前の話)で、へとへとになつて帰つて来るのです。

ここから先は、私の複雑な内面のつぶやき。『自動車絶望工場』は、日本経済を世界有数の地位に押し上げる原動力となつた労働者たちの実態の貴重な記録であり、記念碑的作品であることは間違ひないでせう。しかし豊田市民の私としては、企業はともかく、豊田といふ土地の悪口まで言はなくても良いぢやないかと少し不貞腐れるのであります。例へば「街は荒野のように荒涼として、人影もまばらで、ただ車だけが狂ったように走り回っている」(補章より)なんて表現は、明らかに悪意を含んでゐます。ま、豊田市は何かと嫌はれるから慣れてゐるけれど。

なほ、文中で「トヨタ自動車工業」「トヨタ自動車販売」といふ会社名が出てきますが、当時のトヨタは2社体制だつたのであります。現在は両者がひとつになつてゐます。地元では、いまだに年配者は親しみを込めて「自工さん」と呼ぶのであります。
ルポルタージュの古典ともいふべき本作品、豊田市民以外にはお勧めです。

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