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東京ステーションホテル物語


東京ステーションホテル物語 (集英社文庫)東京ステーションホテル物語 (集英社文庫)



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東京ステーションホテル物語
種村直樹【著】
集英社(集英社文庫)刊
1999(平成11)年8月発行


東京ステーションホテル80周年を記念して、レイルウェイ・ライターの種村直樹さんが書き下した1冊であります。単行本発行時が1995(平成7)年なので、今年で95周年といふことになります。現在は工事中で営業を休止してゐるさうです。重要文化財に指定されてしまつた関係のやうですね。営業再開は再来年の予定と聞いてゐます。

「太平洋戦争前は帝国ホテルと並び立つ存在で、数々の賓客を迎えた。戦争末期に米軍機の爆撃を受け駅舎もろとも炎上しているが、被災前に近い姿で復興した。リニューアルの遅れによって一時荒れ果てた時期もあったが、足場が良いので、常連客と旅行者に支えられ、今日に至った。顧客の一人は、「一流ではないが名門」と評したそうで、言い得て妙である。」(「赤レンガの異色空間」より)

二部構成になつてゐまして、第一部は、当ホテルに係つてきた関係者や有名常連客の話などをからめて東京ステーションホテルを案内する「東京ステーションホテルへの誘い」
何しろ東京駅構内といふ絶好の立地なので、作家などが缶詰になるには都合が良かつたさうです。松本清張『点と線』との係りは有名ですね。209号室が「松本清張の部屋」とされてゐます。『点と線』は交通公社(今のJTB)の雑誌「旅」に連載されたのですが、当時の編集委員だつた岡田喜秋(のち作家に転身)によりますと、清張は当初、『縄』といふタイトルで執筆するつもりだつたやうです。クロフツ『樽』が念頭にあつたかも知れぬが、『縄』ではちよつとまづい(抽象的すぎて読者が意味を理解できない)と岡田さんが提言した結果、『点と線』になつたさうです。
ほかに207号室「森瑤子の部屋」、216・218号室「江戸川乱歩の部屋」、317号室「川端康成の部屋」、322号室「内田百の部屋」、ミニロビー「夏樹静子の世界」など、作家たちに好まれた宿であることがわかります。

第二部は「東京駅と共に歩んだ八〇年」。このホテルの歴史を辿るのですが、それはまさに日本の近現代史とそのまま重なるのであります。日本鉄道の黎明期の話、主要幹線のルート決定にまつはる話など、興味深い。
種村直樹氏の筆ですから、当然鉄道好きも満足する内容でありますが、歴史好き、文学好きが読んでも良いでせう。

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