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野獣死すべし(1959)

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#1436「野獣死すべし(1959)」
昭和34年の堅ゆで卵

製作年:1959年
製作国:日本
製作会社:東宝
監督:須川栄三
出演:仲代達矢/小泉博/団令子/白川由美/東野英治郎
公開:1959年6月9日


 団令子ウィーク二作目は、1959年の「野獣死すべし」。出番は少ないけれど、重要な役どころなので取り上げました。原作は勿論大藪春彦、監督は須川栄三、脚本は白坂依志夫(出演もしてゐます)、音楽は黛敏郎であります。

 大学院生・伊達邦彦(仲代達矢)は、ハードボイルド文学研究の杉村教授(中村伸郎)の下で、翻訳や論文執筆なんかのアルバイトをしてゐます(この中村伸郎、アメリカ留学経験が自慢らしく、何かとアメリカを引き合ひに出す俗物ぶりが良い)。人付き合ひは悪いが、勤勉で秀才ぶりを評価されてゐます。おまけに射撃の腕も物凄い。アメリカの論文コンクールにも応募し、留学の機会を伺つてゐます。

 ところがこの男、その裏では冷酷無比な欲望に憑りつかれてゐました。それは遂に現実化し、ある深夜の住宅街で、岡田刑事(瀬良明)を銃殺し、警察手帳と拳銃を奪ひます。警察は早速捜査本部を設置、ヹテラン刑事の桑島(東野英治郎)と新米刑事の真杉(小泉博)もそのメムバアであります。捜査一課長(清水一郎)は科学捜査を第一に考へるも、捜査は直ぐに行詰ります。若い真杉は案外犯人はヤクザとかではなく、普通のサラリーマンとか学生ではないかと推測しますが......

 村川透×松田優作の作品が有名かと存じますが、此方はより原作に忠実な作りになつてゐます。大藪作品の中でも人気の高いキャラクタア・伊達邦彦を、仲代達矢が怪しくクールに演じます。留学費用の為とは云ひながら、動機無き殺人、殺人そのもののスリルを味はふゲーム感覚で犯罪を犯す人物です。花売りの老婆・三好栄子をいたぶるシーンは中中エグイ。

 女に対しても深入りせず、情婦の団令子によると同じ女を抱くのは三度までらしい。ギャング相手にも互角以上に渡り合ひ、中村哲佐藤允らを手玉に取ります。ところで、ワルの一味に助監督時代の西村潔が扮してゐます。

 東野英治郎が「捜査は勘だ」と云ふと、清水一郎が「捜査は科学だ」と返す古典的なやりとりの間で、新米の小泉博が真相に迫ると云ふ展開。何故なら小泉自身が理由もなく人を殺したい衝動に駆られる事があるので、その心理が理解できるのでした。只、それを実行に移すかどうかが違ふだけだと。恋人の白川由美と結婚したいが、経済的に自信がなく、白川からは責められてゐます。ところで白川が勤めるバアの同僚に若林映子の姿を発見しました。

 伊達邦彦の悪事の総仕上げは、大学の入学金3000万円を強奪する事。これまたまんまと成功し、留学資金をゲットするのですが、論文もコンクール入賞し、留学費用が免除になると云ふ無駄な話になりました(ここでも中村伸郎が自分の手柄のやうに語るのが面白い)。最後はアメリカ行きの飛行機に乗り込み、警察から逃げ果せたかに見えましたが(機内食をご機嫌で食べる笑顔が何だか......)、鍵を握る団令子を追ふ小泉と東野の姿が、仲代をこの後追ひ詰めるのを暗示してゐます。この辺は原作と違ひますが、ご清潔東宝としては、ワルが捕まらずに逃げる展開はNGだつたのでせうか。

 現在では、単に「人を殺したかつた」とか「誰でも良かつた」とか、動機無き殺人は屡々発生しますので、本作の伊達邦彦はそれほどイムパクトを感じないかも知れませんが、逆に云へば時代をかなり先取りしてゐたとも申せませう。

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