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ただ栄光のために 堀内恒夫物語


 

ただ栄光のために 堀内恒夫物語
海老沢泰久【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
1995(平成7)年7月発行


目前に迫つた参議院選挙。自由民主党から比例代表での出馬を決めてゐる堀内恒夫氏。スポーツ省の設立が目標であると語つてゐます。大丈夫かね。
若い世代には堀内恒夫といつても、ピンと来ないかも知れません。低迷した讀賣ジャイアンツで苦渋の表情ばかり見せてゐた監督として記憶してゐるでせうか。

しかし彼は野球人としては、不世出の素質を持つた男として登場したのであります。甲府の高校を卒業後、讀賣に入団して一年目からエースの働きをしました。開幕からの13連勝を含む16勝(2敗)を挙げ、タイトルを総なめしたのであります。彼の不幸は、川上監督を始め、その後の長嶋監督、藤田監督とすべての監督にうまく起用されなかつたことがまづ第一でせう。結果的に20勝以上を挙げたのがたつた一度だけ(26勝)といふのも、堀内を知る者にとつては信じ難いのです。
V9のエースと呼ばれ、200勝も達成したのだから、何の悔いもない現役人生ではないかと人はいふかも知れません。さはさりながら、きつと本人は「こんなはずではなかつた」と、もつと俺はやれたと内心で思つてゐるのではないでせうか。そしてその思ひは妥当なものであると私などは勘考するのであります。

海老沢泰久さんの『ただ栄光のために 堀内恒夫物語』を読むと、栄光の部分よりも、野球の天才ゆゑに他者から理解されぬ堀内投手の、苦悩の部分が印象に残ります。読者には取材した結果を平易な文章で提供するが、作者が主張することはない。却つて堀内の悲しみや怒りが伝はつてくるのであります。
堀内投手の天才ぶりを改めて見せ付けられたといふところでせうか。
こんな選手が日本のプロ野球に存在したことを記録してくれた本書は、多くの人に読んでもらひたい。ところが絶版なのです。おお。

ついでながら、選挙には出て欲しくなかつた...

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