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終着駅へ行ってきます


終着駅へ行ってきます (河出文庫)終着駅へ行ってきます (河出文庫)



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終着駅へ行ってきます
宮脇俊三【著】
河出書房新社(河出文庫)刊
2010(平成22)年6月発行


終着駅といふ言葉には旅情をそそるものがります。
ここでいふ終着駅とは、列車の終点といふ意味だけではなく、線路がそこで途切れて文字通りの行止りの終点といふ意味であります。その終着駅のいくつかを宮脇俊三さんが訪れるのですが、駅の選定が渋いのであります。普通なら観光ガイドを兼ねるやうな書籍になりさうですが、宮脇さんにはさういふ思惑はほとんど無いやうに思はれます。

例へば北海道で取り上げてゐる終着駅...根室・根室標津・十勝三股・糠平・増毛・瀬棚。
根室はそれなりの町の筈ですが、そこまで行く路線は貧弱な単線が延びてゐるだけです。「どこへ行く当てもないけれど線路が敷いてあるから走るしかありません、といったような走り方である」(本書より)
眺望は良いけれど、これといつた観光地がある訳ではなく寂寞とした風景が続くだけであります。十勝三股へ向かふ代行バスでは、乗客は宮脇さんの他わづか2名でしたが、「いずれも鉄道ファンらしい若い青年である。訊ねてみると、はたしてそうで、一人は埼玉、一人は神戸から乗りに来たとのことであった。まともな客はひとりもいないのだ」(本書より)といふ笑へない現状。

特に象徴的なのは、私が住む愛知県にある、武豊線武豊駅であります。
本文にもありますやうに、武豊線は東海道線よりも古い、由緒ある路線で、何かと数奇な経緯をたどつてゐます。歴史に造詣の深い宮脇さんとしては「私には歴史的な思い入れや判官びいきがあって、このシリーズに武豊線は欠かせないと信じている」(本書より)のでありますが、一般の人が乗つても何も面白くないでせう。沿線風景も平凡、終点に観光地もありません。しかし宮脇氏の筆になると、行きたくなつて、うずうずするのでした。
これこそ文章の力と申せませう。

河出文庫6月新刊ですが、内容は25年以上も前の鉄道事情が述べられてゐます。廃線によつて現存しない終着駅が多いですので、注意が必要であります。では。

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