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倫敦! 倫敦?


倫敦!倫敦? (岩波文庫)倫敦!倫敦? (岩波文庫)



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倫敦!倫敦? 
長谷川如是閑【著】
岩波書店(岩波文庫)刊
1996(平成8)年5月発行


長谷川如是閑は昭和・戦後まで活躍した人ですが、明治期の人といふ印象が強いのであります。
その明治末期に、大阪朝日新聞の特派員としてロンドンを訪れた時の記録でございます。
同時代に英国留学をした人物としては夏目漱石が有名ですが、彼はロンドンに馴染めなかつたやうで、ノイローゼといふか神経衰弱といふか、どうやら心をやられてしまひ無念の帰国をするのでした。

それに比して長谷川如是閑の活き活きとした様子はどうでありませうか。外国の情報などは、今とは比較にならぬほど乏しい時代なのに、大ロンドンでも気後れすることなく堂々としてゐるではありませんか。
好奇心旺盛で、何にでも興味津々なジャアナリストの姿が浮かんできます。一応社命として派遣されてゐるのですが、義務感などはいささかも感じられず、嬉々としてロンドンの日々を過ごしてゐるやうです。
そして、皮肉なユウモアや諧謔精神が全編を貫く。そもそも『倫敦!倫敦?』といふタイトルからしてさうであります。関係ありませんが、ロンドングループのTVCFを想起させますね。(楽しいロンドン、愉快なロンドン...)。

ロンドンでの体験のみならず、日本から往復する様子も巻末に記されてゐます。(「倫敦まで」「生駒にて」「帰路」)。シベリア鉄道での往路ではロシア人やウラジオストックの町の独特な観察が披露され、帰路のシンガポールでは「月並の智識として落としてはならぬものが五つある」として、水上の家・ジョホール・植物園・ライスカレー・日本人遊郭を挙げてゐます。また香港では東洋の果てに来たのにいまだ英国の警察権を脱することが出来ぬとして忌々しいと語ります。
深刻な筆致ではなく、やはり笑ひを誘う書き方なので読者の頬もゆるむのでした。

まだ洋行がごく限られてゐた時代に、これほど上等のルポが残されてゐたのか、といふ嬉しい驚きを感じました。しかもロンドンに滞在してゐた期間は、どうやら半年にも満たないやうです。この短期間にかくも的確なる文明批評をものしたと知り、二度びつくりと申せませう。

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