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巨人軍に葬られた男たち


巨人軍に葬られた男たち (新潮文庫)巨人軍に葬られた男たち (新潮文庫)


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巨人軍に葬られた男たち
織田淳太郎【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2003(平成15)年2月発行


20年前くらゐまでは、日本の男どもは皆プロ野球に夢中になつてゐたものであります。なかでも読売ジャイアンツなる球団は常勝ティームで、抜群の人気を誇つてゐました。巨人・大鵬・卵焼き。
同時にこの球団は常勝を義務付けられてゐた(わけでもないけど、皆そんなふうに捉えてゐた)ので、勝つためにはなりふり構はず何でもやる、といふ面もございます。古くは別所引抜き事件なんてのもありました。そんなこんなで「アンチ巨人」といふ一派もあります。

『巨人軍に葬られた男たち』は、まづ前半が「あるドラフト一位投手の死」。湯口事件の湯口敏彦を中心に、難波昭二郎・小坂敏彦・大北敏博といつた人たちを取り上げてゐますが、「巨人軍に葬られた」といふのは少しおほげさな気がします。
湯口事件については私はほとんど知るところではなく、何となく「自殺した巨人の投手」くらゐの認識でありました。本書を読めば分かりますが、もちろん自殺ではなかつたのです。しかし多くの人が自殺だと思つてゐるらしいのです。確かに謎の多い死ではありますが。明らかにジャイアンツが間違つたのは、うつ病が完治しない状態で練習に復帰させたこと。そして死後の川上哲治監督のコメント。この発言は、無知・偏見・驕り・責任転嫁・自己保身がすべて詰まつた、リーダーにあるまじき内容でした。おそらくこれにより、湯口投手の被害者性が喧伝されたと見ます。著者の思ひ入れが詰まつた、力作ルポと申せませう。
個人的には、難波選手に対する仕打ちが非道であると思ひました。中日入団がほぼ決まつてゐた難波選手を強引に説き伏せ、巨人に入団するよう工作するスカウト。ところが六大学のスタア長島茂雄の入団が決まるや、もう君は必要ないから巨人に来なくてもいいよと突き放す。恐ろしい世界。

後半はスーパースタア・王貞治監督の苦悩を描いた「スーパースターの涙」。
巨人軍の歴史を見ますと、王貞治といふ人は文句なく最高レベルの貢献者でせう。さういふ人に対してさへ、かかる仕打ちを平気でする球団。著者でなくても怒りがわいてくるものです。
人格者の王さんは、誤解による非難やいはれなき中傷にも黙つて耐へたのです。詳しくは本書を読んでみて。

読後思ひました。これらは、はたして昔話か? より巧妙な形で今でも行はれてゐないだらうかと。
すでに「球界の盟主」とはいへない巨人軍ですが、積年の体質といふものはさう簡単に変るものではないと感じます。杞憂ですか。
プロ球界に少しでも興味のある人なら、一気読みするでせう。著者の語りつぷりも、熱い。

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