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列車名徹底大研究


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列車名徹底大研究
曽田英夫【著】
JTB(マイロネブックス)刊
2002(平成14)年4月発行


来年全線開業予定の九州新幹線には、すでに「さくら」といふ名称で新大阪からの直通列車が走る予定になつてゐます。これは以前廃止されたブルートレインの名前が復活したのであります。九州内の新幹線としてはすでに「つばめ」が使はれてゐますし、今年の12月には東北新幹線で「はやぶさ」が復活。
そしてさらに驚くニュースが。山陽-九州新幹線に「のぞみ」級の最速列車が設定されることになり、その名称がどうやら「みずほ」になりさうだといふのです。
新幹線に追はれるやうにして消えた列車名が、今度は新幹線電車の愛称として使はれる傾向にあります。いはゆるオオルドファン(私に非ず)には嬉しい措置と申せませう。

「みずほ」には個人的な思ひ入れがありました。父親の郷里鹿児島へ帰る時、最初に乗せてもらつた(記憶がある)のがこれだからです。ここで人は、つぶやくかも知れません。「みずほ」は当時東京-熊本・長崎間の列車であるぞ、西鹿児島(現・鹿児島中央)行きの「はやぶさ」と間違へてゐるのではないか?と。
いやいや、当時の帰省シーズンには「はやぶさ」はなかなか寝台券が取れなかつたのですよ。そこで、一段人気面で劣る「みずほ」と、熊本からの急行「かいもん」の乗り継ぎなのです。
かつては「はやぶさ」と、長崎行きの「さくら」を補完する地味な役割の「みずほ」でしたが、新幹線の舞台では「さくら」の上位列車として復活するのは面白い。

と、個人的な話をしてゐるとキリがないので、『列車名徹底大研究』の話。
第1章ではJR化後の新しい名称を紹介。人名から採用した名称としては「いさぶろう・しんぺい」が有名ですが、現役大関から命名された「かいおう」なんてのは珍しい。安直な「スーパー○○」方式命名は打ち止めにしてもらひたいのです。
第2章は、伝統的な列車名のルーツを探ります。本来は特急列車には「日本を代表する山・花・鳥など」、急行列車には「走る地域の旧国名や地名」が付けられるのがざつとした原則でしたが、特急がこれだけ増えるとさうも言つてゐられなくなつたといふことか。
第3章の「列車名ウォッチング」はいささかモノマニアック。
第4章は往年の名列車の話。初めて国鉄の列車に愛称がついたのは昭和4年。本書でも触れられてゐますが、公募で決められました。投票結果は、①富士②燕③桜でした。そこで1・2等列車に「富士」、3等列車に「桜」と命名されたのです。この結果を見て、口の悪い連中は「次に選ばれるのは“ゲイシャ”か」と揶揄したさうです。2位の「燕」はのけ者にされたのではなく、翌昭和5年に登場予定の「超特急」につけるため、温存したのでした。たしかに最速列車には「富士」「桜」より「燕」がふさはしい。
以後「燕(つばめ)」は国鉄を象徴する愛称として、別格扱ひにされてきたのであります。プロ野球に参入した国鉄球団のニックネームも「燕」からスワローズとなつてゐるのです。サンケイになつてからニックネームを「アトムズ」に変更しましたが、ヤクルトになつて再びスワローズに戻しました。ヤクルト、ありがたう。

世の好事家の方々には興味のある話が載つてゐます。しかし役に立たない話を嫌ふ人は読まないがよろしい。
雑学といふにはメイニアック過ぎるし、鉄と呼ばれる人たちには物足らぬかも知れません。
私は鉄ではありませんが、好事家の末席を汚す者として、推薦することにしませう。では、さらば8月。

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