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千代の富士一代


 

千代の富士一代
石井代蔵【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
1991(平成3)年9月発行


横綱白鵬独走の相撲界。白鵬関には何の罪もありませんが、つまらないのであります。
先達ての初場所における白鵬は、圧倒的な強さを感じませんでした。結構スキが有つたやうに思ひますが、稀勢の里関以外は虚しく敗退したのであります。何とかしてくれ。

テレビで昔の(といつても昭和後期くらゐ)取組をVTRで見せてくれることがあります。「昔は良かつたなあ」的な物言ひは好きではないのですが、当時の土俵の充実振りを見ると、やはり隔世の感があります。
この『千代の富士一代』も、そんな時代の物語でございます。

千代の富士を語るにあたつて避けられぬ、九重部屋の歴史から語られます。元々九重部屋は、名門出羽海部屋からの破門騒動から始まりました。
元千代の山の九重親方は次期出羽海を継ぐ予定だつたのが、当時現役の横綱佐田の山が出羽海親方の娘と婚約し、後継者となつてしまつたのであります。
そこで九重親方は独立して部屋を興しますが、当時の出羽海部屋は「分家独立を許さず」といふ建前のため、破門されたといふ経緯がありました。

単なる千代の富士個人のサクセスストオリィではなく、千代の山-北の富士-千代の富士と続く九重三代の物語でもあります。もちろん実話なのですが、石井代蔵氏の筆力により、まことに感動的な「相撲小説」となつてゐます。千代の富士をあまり知らない人に、特に読んでいただきたいと勘考するものであります。

現在の九重部屋は千代白鵬が部屋頭で、唯一の関取。黄金期を思へば、ちと寂しいですな。若い千代の国、千代鳳あたりがきつと頭角を現すのではないか、と期待してゐます。
予想が外れたら、すまん。

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