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文学の輪郭


文学の輪郭

文学の輪郭
中島梓【著】
講談社(講談社文庫)刊
1985(昭和60)年10月発行


かつて書店員の頃、ハヤカワ文庫の『グイン・サーガ』シリーズを定期購読の予約をしてゐたお客様がゐました。つまり、新しい号が出たらばあたしのために1冊キープしといてね、といふやつです。普通定期購読の対象となる出版物と言へば、週刊誌とか月刊雑誌でせう。小説のシリーズものは通常考へないと思ひます。それだけ『グイン・サーガ』は安定して発行されてゐた、といふ裏返しでもあります。何しろほぼ正確に2カ月ごとに新刊が出てゐたのですから、隔月刊雑誌と変りませんね。
先月26日、栗本薫さんの訃報に接した時にまづ連想したのが、そのお客様のことでした。きつと途方に暮れてゐるのではないだらうか。56歳、早すぎる死でした。

『文学の輪郭』は中島梓名義の、初の文芸評論です。講談社文庫版の表紙デザイン、何でせうか。背表紙がたくさん並んでゐますが...
埴谷雄高『死霊』、村上龍『限りなく透明に近いブルー』をそれぞれ極北・極南と位置付けて論じてゐます。文学に輪郭があるのか否か、私などには良く分かりませんが、これはあくまでも昭和52年当時の見立てで、やはり境界線は潮の干満のやうに常に動いてゐる曖昧なものと思はれます。
確か筒井康隆氏も、輪郭はアメーバ状にしていただきたい、実作者としては足を伸ばす余地が残つてゐる方が希望が持てると言ふ意味のことを書いてゐました。
また、文学はどこへ行くのかと構へながら、小説以外のジャンルを完全無視してゐることが気になりました。これならばいつそ『小説の輪郭』で良いのに。
そんなことを思ひながら読んでゐたのですが、文庫版あとがき「《ロマン革命》序説」にて、私の疑問はおほむね霧散したのであります。あたしはすべて解つてゐるんだからね、と言はれたやうな気分で、最後は心地良く読了できました。
この多作な小説家の、記念碑的評論と申せませう。

*入手難度・・・★★★☆☆(絶版なので新品は入りにくいが...何とかなる)

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