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武蔵野


武蔵野 (岩波文庫)武蔵野 (岩波文庫)



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武蔵野
国木田独歩【著】
岩波書店(岩波文庫)刊
1939(昭和14)年2月発行
1972(昭和47)年8月改版
2006(平成18)年2月改版


武蔵野とはどこを指すか。無論今の武蔵野市のことではありません。武蔵野線も関係ないですな。しかし武蔵野線は都心からの放射状レールと違ひ環状線(半環状線)なので、駅間にはそれなりの趣があります。
それは兎に角、本文の中では筆者国木田独歩の朋友の見解として、次の意見が開陳されてゐます。

「まず雑司谷から起こって線を引いて見ると、それから板橋の中仙道の西側を通って川越近傍まで達し、君の一編に示された入間郡を包んで円く甲武線の立川駅に来る。(中略)さて立川からは多摩川を限界として上丸辺まで下る。(中略)そして丸子から下目黒に帰る。(中略)以上は西半面。
東の半面は亀井戸辺より小松川へかけ木下川から堀切を包んで千住近傍へ到って止まる」

今から百年以上も前のスケッチであります。痛快といふか、何だか気持ちがほぐれる文章と申せませう。
同時に貴重な記録にもなつてゐます。

さて表題作「武蔵野」以外も佳作快作傑作が多く収録されてゐます。
「忘れえぬ人々」の叙情性。最後の一文が効いてゐます。「鹿狩り」では、誰でも記憶のある少年時代の心細さみたいなものが感じられます。
「河霧」の豊吉くん、良い味出してゐます。「小春」「初恋」「糸くず」...皆良いですね。
明治の作家たちが古典の棚に納まる中、国木田独歩はまだ読まれてゐるやうですが、その理由が分からうといふとものであります。

*新潮文庫版もあり。

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