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聖の青春


聖の青春 (講談社文庫)聖の青春 (講談社文庫)



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聖の青春
大崎善生【著】
講談社(講談社文庫)刊
2002(平成14)年5月発行


将棋とわたくしの関係。
幼時に父親から駒の動き方を教はり、興味を持つたわたくし。
長ずるに及び、より強い相手を求めたり、大山康晴十五世名人の著書で独学したり...ま、それも精々中学生くらゐまでですね。高校生にもなると、周囲に強い奴はうようよしてゐます。いや、うようよしてゐるのなら大して強くない。結局わたくしは大して上達してゐなかつたことになります。
それでも将棋に対する興味は失ふことなく、漫画の『月下の棋士』などは愛読してゐました。能條純一さんの作品ですが、「あンた、背中が煤けてるぜ」と言ひさうな主人公が痛快でした。

その『月下の棋士』に登場した「村森聖」のモデルこそ、本書『聖の青春』で語られる村山聖さんであります。
村山さんは5歳にして、難病ネフローゼの診断を受けます。父・母・兄のそれぞれが、かうなつたのは自分の責任だと自分を責めるのです。そしてせめてもの罪滅ぼしに、聖さんの我儘や要求は出来る限り受け入れやうと。涙が出さうな家族ではありませんか。

結果的には難病に犯されたせいで将棋の世界で名を馳せることになりましたが、その代償も大きかつたと申せませう。希代の神童、天才と謳はれながら、やはり病のせいで念願の名人位を手に入れることなく、29歳の若さでこの世を去りました。その無念は如何許りでせうか。羽生善治さんが追悼の席で、村山さんと同時代で戦へたことを心から光栄に思ふ、と述べたのは本心からの言葉でせう。

著者大崎善生氏の筆力も相俟つて、将棋に興味の無い人でも一気に読めるのではないでせうか。少なくともわたくしは泣いてしまひましたよ。感動の一冊でございます。

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