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古代への情熱


古代への情熱―シュリーマン自伝 (新潮文庫)古代への情熱―シュリーマン自伝 (新潮文庫)



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古代への情熱―シュリーマン自伝― 
ハインリヒ・シュリーマン【著】
関楠生【訳】
新潮社(新潮文庫)刊
1977(昭和52)年8月発行


シュリーマンの名を初めて聞いたのは、小学校の「道徳」の時間でした。
『明るい心』などといふ、今から思へば胡散臭い教科書でしたが、わたくしは結構気に入つてゐました。内容が古臭く、「名古屋時間」なんて言葉が出てゐた記憶があります。
で、そのシュリーマン。教科書には自伝通りの内容が記載されてゐました。幼時にトロイアの物語を知り、周囲の大人たちが「あれは架空の話なのだよ。トロイアは実在しないのだ」といふのも耳を貸さず、大人になつたら絶対トロイアを発掘するんだ!と決心する。
そして超人的な努力によつて語学を身につけ、財をなし、たうたう夢を実現する。恰好の修身用素材と申せませう。

自伝となつてゐますが、実際にシュリーマンの手による部分は、最初の章だけ。全体の四分の一程度でせうか。
そして残りは友人のアルフレート・ブリュックナーといふ人が補完してゐます。その部分は当然シュリーマンは三人称で語られるのであります。原題を直訳すると「死までを補完した自叙伝」ださうですが、なるほどといふ感じです。
訳者の関楠生氏によると、原著には「古代への情熱」なるタイトルは付されてゐないといふことで、関氏としては避けたかつたが、版元側の意見を取り入れた結果ださうです。

シュリーマン本人による少年時代の記述は、今ではその信憑性が疑はれてゐるとか。エルンスト・マイヤー氏による「後記」にもそれを匂はせる記述があります。
しかしシュリーマンの業績を全否定できるものでもなく、評価されるべき点は肯定的に捉へねばなりますまい。本書も読み物として語り継げば良いのではないでせうか。教訓は教訓としてね。

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