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オリンポスの果実


オリンポスの果実

オリンポスの果実
田中英光【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1951(昭和26)年9月発行
1967(昭和42)年11月改版


師匠・太宰治を私淑するあまり、太宰の墓前で自殺してしまふほどの人物であります。いかなる無頼な小説であらうかと読み始めたのですが、実に甘つたるい青春小説でした。
主人公・坂本君はロスアンゼルス・オリンピックのボート競技選手。本文中に「四年後のベルリンに備えて」といふ記述がありますので、1932年の第10回大会のことと思はれます。
ロスへ向かふ船旅中に、高飛び選手の熊本秋子さんと出会ひ、以降彼の関心はほぼすべて「秋ッぺ」に注がれる事になります。肝心のボートの結果は、予選敗退といふ苦いものでした。
競技の結果も出せず、彼女との進展も無く、失意のまま横浜港へ帰る―

乱暴にまとめれば、だいたいかういふことを、「十年近い歳月」を経た後に、手記といふ形で熊本秋子さんへ語つてゐます。
「あなたは、いったい、ぼくが好きだったのでしょうか」といふ疑問を呈する目的で、この長々とした手記を書いたといふことになります。解説の河上徹太郎氏の指摘するごとく、読者は延々と惚気話を読まされたやうな気分になるのではないでせうか。青春小説と言はれてゐますが、若い人が読むと逆に馬鹿にして放擲するかもしれませんね。
しかし不思議に読後感は悪くありません。とにかく奇妙な小説としか言ひやうがない。
ところが残念ながら絶版ださうです。新刊書店では入手不能。
ではごめんください。

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