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田舎教師


田舎教師 (新潮文庫)田舎教師 (新潮文庫)


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田舎教師
田山花袋【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1952(昭和27)年8月発行
1967(昭和42)年10月改版


主人公・林清三くんには実在のモデルがゐるさうです。
それかあらぬか、彼の描写にはリアリティがあります。それも目を背けたくなるくらゐの。
彼は文学青年であります。しかし文学で身を立てる事は出来ず、タイトル通りの田舎教師となります。
しかし彼は、このまま埋もれる心算は無い、と考へてゐました。少なくとも教師になりたての時分は。
そしてすでに夢を捨ててしまつたかのやうな市井の人たちに対して、内心反発といふか、俺はさうならないぞといふ意思が見えるのであります。プライドが高いとも申せませう。

それでは清三くんは将来の出世を実現すべく、日夜努力を続けてゐるのかと思へば、それほどでもないやうです。自分の夢を必ず実現するぞといふ意思があまり窺へぬ。
また、好きな女性が出来ても、悶々とするだけで具体的行動には移せません。
何と中途半端なのでせうか。これが「自然主義文学の代表作」の主人公か!
と嘆いても詮無いこと。
それよりも、清三くんのことを、まるで自分の事のやうに感じる人が多いのではないでせうか。
実は私がさうだつたので。
彼に感じたリアリティとは、案外そんなものかも知れません。

ところで私が興味深かつたのは、実は「解説」であります。
この新潮文庫版では、かの福田恆存氏が解説を書いてゐるのですが、この人選はよく分かりません。しかし福田氏だからといつてここでは怖がる必要はないのであります。
彼は何だか厭々解説を引受けたかのやうな書きつ振りなのです。
「(『田舎教師』は)花袋の長編力作であります」などと言ひながら、「たいくつな小説」と断じてゐます。
一応「田舎町の風物や生活」がリアリティをもつて書かれてゐる、などと取つて付けた様なことも言つてゐますが、読者に対して「ああ何だか詰まらなさうな小説だな」と思はせる効果抜群であります。面白いですね。

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