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さぶ


さぶ (新潮文庫)さぶ (新潮文庫)


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さぶ
山本周五郎【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1965(昭和40)年12月発行
1976(昭和51)年7月改版


栄二とさぶは、芳古堂といふ表具屋で修行中の親友同士であります。
栄二は男前で賢く娘たちにちやほやされる奴。
一方のさぶは、見るからに愚鈍でさえない男。
対照的なふたりですが、強い絆で結ばれてゐるのです。

ふたりが23歳になつた時、事件は起きます。
芳古堂の得意先である「綿文」で、高価な古金襴の切れが紛失したのですが、それが栄二の道具袋から出てきたといふのです。
もちろん栄二には覚えはなく、濡れぎぬであります。しかし、証拠が揃ひすぎてゐて、一方的に出入りを禁止されてしまひ、芳古堂の親方からは暇を出されるありさまです。
綿文の親方に問ひたださうとしますが、逆にやくざものにたたき出されてしまふ。
栄二くんの辛く長い試練が始まるのであります...

といふふうに、タイトルは「さぶ」ですが、物語は栄二が中心になつてゐます。さぶは栄二の周辺でおろおろするばかりで、物語の主導権を握れません。しかし、これがさぶのさぶたる所以なのでせうね。

栄二が試練から立ち直つてゆく行程はまことに感動的で、作者はこのために無実の罪を拵へたのだらう、濡れぎぬの真相は二の次で、すべては栄二くんのために作者が与へたものなのだらうと思ひながら読み進めていくと、何と最後で「犯人」が明らかになるではありませんか。
しかし、私にはどうも納得のいかない幕切れだなあと思はれました。謎のままで終つた方が後味が良いと思ふのですが。
それとも「世の中はそんなものだぜ」といふ作者のメッセージが込められてゐるのか...

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