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私の個人主義


私の個人主義 (講談社学術文庫 271)私の個人主義 (講談社学術文庫 271)


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私の個人主義
夏目漱石【著】
講談社(講談社学術文庫)刊
1978(昭和53)年8月発行


夏目漱石の講演集であります。いやあ面白い。
面白いといふと語弊がございますか。
鹿爪らしい顔をして気取つてゐる有名な写真がありますが、実際にはきつと茶目ツ気のある人なのでせう。

「道楽と職業」に於ける道楽とは、まあ学者とか芸術家とか、さういふ職業のことを指してゐます。
官吏や会社勤めと違ひ、自分の匙加減で仕事をする人たち。やくざな職業と思はれてゐたのでせう。
それにしても明治44年当時、漱石はすでに職業の細分化に触れてゐます。
「現代日本の開化」では、「開化は人間活力の発現の経路である」と定義します。何だか良く分かりませんね。
そこで積極的な活動と消極的な活動に分類して論を進めるのですが...漱石は現代日本の開化は上滑りの開化と断じ、日本の行く末は悲観的だと嘆いてゐます。当時こんなことを公で発言しても大丈夫だつたのでせうか。日露戦争が終つてまだ間がなく、やあ日本はあのロシヤに勝つたのだ、世界の一等国だなどと浮かれてゐた頃でせう。
「中身と形式」を見ますと、明治維新からまだ50年に満たない中途半端な時代を感じます。一般大衆に於ける善悪美醜の複雑化が窺へます。
「文芸と道徳」では、当時の文学の主流である浪漫主義・自然主義と道徳の関係を説きます。自然主義文学に対して、案外寛容な物言ひですね。
「私の個人主義」の主張は、危険思想扱ひされなかつたのだらうかと、心配になります。もちろん現代の私が明治の漱石を心配しても詮無いことでありますが。国家より個人が優先されるなどと説く漱石。カッコイイのであります。

さすがにかつて千円札の顔になつただけありますね。大衆の味方。私は再び千円札に復帰して貰ひたいと祈願するものであります。現在の千円札の人は、偉い博士ですが、どうもあの親不孝ぶりが気に入らない...

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